禁止魔カード、使用許可要請。

禁止魔カード、使用許可要請。



「ぎぃいいいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」


 圧倒的な破壊力。

 センが必死になって積んできた『本気』は、

 狂気的に強大だった。


 間違いなく強大で、膨大で、

 次元違いの『最強手』だった……


 ――けれど、






「ぅ……ぐ……くう……うぐぅう……ぃいい……ぐほっ、ごほっ……かはっ……うぷっ」






 削り切れなかった。

 死ななかった。

 あれだけの暴力にさらされていながら、しかし、

 P型センキーは生き残った。


 ズタボロの姿で、わかりやすく死にかけで、しかし口を開く。


「ぐぅ……こ、これだけの、スペック差があって……どうして……」


 うめきながら、


「ふ、ふざけるなぁぁ……こ、こんな不条理……ゆるされるはずがない……」




「不条理はテメェだろ。理不尽のかたまりが……アホみたいな生命力しやがって。つぅか、俺のガチ龍閃崩拳くらって普通に生きてんじゃねぇよ。ヘコむだろ」




 そんなセンの言葉はシカトして、

 P型センキーは、


「くそったれ、くそったれ、くそったれ……」


 苦虫をかみつぶしたような顔で、そううめいてから、


「こ、こんな不条理は……是正されなければいけない。……俺の『唯一』にして『最大』の望み……『理論上の最高値』を削ってでも……」


 強い口調でそう言うと、

 P型センキーは、


「……」


 一瞬だけ、ためらいを見せたものの、

 しかし、スっと、アイテムボックスに手を伸ばし、

 奥から、一枚の魔カードを取り出すと、


「……役に立たなかったと……無能だと……無価値だと……認めたくない……イヤだ、絶対に……しかし……」


 苦悶の表情で、


「俺の『存在意義』を殺してでも……それでも……果たさなければならない義務が……俺にはあるのだ……」


 最後にそう言ってから、






「禁止魔カード、使用許可要請」






 ボソっとそうつぶやいた。

 すると、

 どこからか、


 ――許可する――


 そんな声が空間に響いた。

 許可を受けたP型センキーは、

 ギリっと『自身のふがいなさ』を奥歯で表現してから、






「――『だるまさんがころんだ』――」






 と、禁止魔カードの名前を口にしながら、ビリっと破り捨てる。

 すると、


(……なっ?!!)


 ビリィイイッッと、脳内が一瞬痺れたかと思った直後、

 セン仮面とエースロボの体が、

 ズガァアアアアンッッ!

 と、豪快な音をたてて、跡形もなく吹き飛んだ。


「――っっっ」


 オプションを吹き飛ばされただけではなく、

 センエースの体も、

 まるで氷漬けにでもされたみたいに、ピクリとも動かなくなった。


 理屈も数値もシカトした、

 凶悪で理不尽が過ぎる不条理の執行。


 禁止魔カードの行使。

 その天元突破したいやがらせに、センは瞠目する事しかできない。


(っっ……しゃ、喋れもしねぇ……バカな……閃統空羅(せんとうくうら)を積んだ今の俺が、わずかな抵抗も出来ないなんて、そんなこと、あっていいわけ……っ、な、なんなんだよ、マジで……これ……どういう呪縛……こっ……――『答えやがれ、P型センキー。聞こえているだろう』!!)


 センエースのテレパシーを受け取ったP型センキーは、


「ふん……さぁて、どういう呪いなんだろうねぇ。俺にも、さっぱりわかんねぇ」


 回復魔法を使って、龍閃崩拳のダメージを整えながら、

 まるで、色々とあきらめて、開き直ったような、泣き笑いの顔で、


「お前の体……まだしばらくは動けないから、ゆっくりと考えてみろ。その間、こっちは仕事をしておくから」


 そう言ってから、

 グっと、両の拳を握りしめて、


 その硬く握られた二つの拳を、

 胸の前で、ガツンッ、と合わせた。


 すると、

 キュインという、次元が裂ける音がして、

 直後、

 シュンという軽快な音とともに、



「……ん? ここは……」

「……強制転移……でちゅか……」



 この空間の片隅に、

 アダムとシューリが転移してきた。


 二人の女神は、

 ほんのわずかな一瞬だけ、強制転移に戸惑ったものの、


「「……っっ」」


 おたがい、すぐさま、

 『自分の現状』を正確に把握した。


 何やら、呪縛を受けたようにピクリとも動いていないセンエースと、

 そんなセンエースと対峙しているヤバげなオーラを放つ男。


 解説の言葉なんて必要はなかった。

 エマージェンシーだと、本能が認識する。


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