彼の出番。

彼の出番。


「ははっ……『究極真奥義』なんて大層な名前だから、いったい、どれだけ強力な技なんだろうと期待したんだが……結局のところは、ちょっと小マシな分身か。安い、安い。……あえて言おう。しょうもないんだよ!」


 そう言いながら、セン仮面とエースロボをボッコボコにしていくP型センキー。

 センの本気を積んでいるため、どちらもハンパなく『ステの数値は高い』のだが、

 しかし、とてもじゃないが、『P型センキー(究極超神化7)』には勝てそうもない。

 決定的過ぎる戦闘力の差が痛すぎる。


「くっ……強い……」

「まさか、俺たちが手も足も出ないとは」


 二人(セン仮面&エースロボ)がそう嘆いていると、

 それまでは、後方で静観していたモンジンざえもんが、




「私の出番のようだな」




 そう言いながら、威風堂々と、

 セン仮面とエースロボを押しのけて、P型センキーと対峙する。


 そのどこまでも超越者然とした背中は、

 センたちに、あふれんばかりの勇気を与えてくれる。


「と、とんでもない気迫だ……」

「期待して……いいんだな?」

「頼んだぞ、モンジンざえもん。『俺たちの道は、こんなところで終わっちゃいない』ってことを、あのクソ野郎に教えてやれ!」


 センたちの期待を一心に背負ったモンジンざえもんは、


「吠えるなよ、ヒーロー。黙ってみていればいい。それで……すべて終わる」


 しびれる一言を残しつつ、

 P型センキーの目の前まで歩みを進めると、

 そこで、ピタっと歩を止め、

 一度、ニヒルに、


 ……フっ、


 と微笑んでから、

 泰然かつ超然としたオーラを放ちつつ、






 ――クルっと反転し、






 腰に携えていた剣を抜いて、ビシっと構えながら、

 『センたち』に向かって、


「さあ、P型センキー様にさからうブタ野郎ども。どこからでもかかってこい」


 などと言い放った。


「「「ふぁっ?!」」」


 いっそ清々しいほどの、鮮やかな裏切り。

 職人芸を見せつけてきたモンジンざえもんに対し、

 センたちは、


「き、貴様ぁあ! 寝返りやがったな!」

「みそこなったぞ!」

「もどってこい!」



「ことわる。私は常に強い者の味方だ」



「「「ざけんじゃねぇ! この卑怯者がぁ!」」」



「黙れ、カス共。『卑怯は敗者の言い訳』という『エロい人の言葉』を知らんのか。教養の足らんブタ共め。さあ、P型センキーの兄貴、一緒にあのゴミどもに引導を――ふげっ」



 言い終わる前に、

 P型センキーから、背中に蹴りをもらって吹っ飛ぶモンジンざえもん。


「足手まといはいらない」


 冷たく言い捨てるP型センキー。

 心底軽蔑している目。

 さすがのP型センキーも、モンジンざえもんを味方につけるのだけはイヤだったらしい。


 ――センたちの目の前まで吹っ飛んだモンジンざえもんは、

 当然のように、


「なに、裏切ってんだ、このぼけぇ!」

「ブタ野郎はテメェだろ! 恥を知れ!」

「おらおらおらぁあ!」


 ボコボコにされた。


「ぷぎーっ!」


 あらかた、ボコり終え、

 だっせぇ断末魔が響き渡った直後、


「けっ、このブタが。消えてろ」


 モンジンざえもんの体が、空間に溶けるようにスゥと消えた。

 それを確認すると、

 センが、


「よし、これにて儀式は全て終了。さあ、ここから本番だ。気合入れていくぞ、セン仮面、エースロボ」


「まかせてくれ、俺のセンビームは全てを無に還す」

「俺のエースパンチは無敵だ。あんなカス、ワンパンよ」


 『裏切ったモンジンざえもんをボコボコにした』ことで、

 両者は、それぞれ『最強の固有技』が使えるようになった。


 ずいぶんと手間のかかる準備だったが、

 整ってしまえば、もはやなんのデメリットもない。


 ここからのセン仮面とエースロボは最強のオプション。


「センビィイイムっっ!!」

「エースパァンチッッ!!」


 セン仮面は、究極超火力の異次元砲を放ち、

 エースロボは、究極超火力かつロケットパンチ型になった閃拳をぶち込む。


 セン仮面&エースロボは、絶妙な距離から、

 センビームとエースパンチを放ち続け、

 『近距離でP型センキーに削りをいれているセンエース』を全力で援護する。


(ちっ……なんだ、そのイカれた火力……)


 とても分身が使っているとは思えない、

 凶悪な性能の『異次元砲』と『ロケット閃拳』。

 そのハンパではない熟練度は、なんと、センの『ガチ本気(マジ)』を超えている(最大出力では流石に本体を超えられないが、異次元砲とロケット閃拳の熟練度という一点だけを見れば、二人とも、本体のセンを超えているのだ)。


 気が遠くなるほど長期にわたる狂気的鍛錬と、

 ありえないほど尖りに尖ったアリア・ギアス、

 その両方を積まないと実現不可能な、圧倒的デストロイオプション。


(なるほど、そういう技か……究極真奥義……たんなる出オチの一発ギャグかと思ったら……ずいぶんと狂ったスペックのオプションじゃねぇか……カースソルジャーなんかと同じで、直接戦闘ではなく、固有技能が強力なタイプ……)

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