どうせぇ言うんや……
どうせぇ言うんや……
「うーむ、貴様にとって価値の低いカスを殺しただけでは、やはりダメか……となると、やはり、あの女を潰すしかないか。あのキ○ガイ女は、貴様を動かすのに有益だから、出来ればとっておきたいところなのだが……まあ、しかたないか」
そう言って、また瞬間移動しようとするアダム。
そんなアダムに、トウシは、
「うあああああああ!!」
拳に大量のオーラをぶちこんで、アダムの顔面めがけて殴りかかった。
ただのやぶれかぶれではなく、
きちんと加速の魔法陣を展開して、ブーストをかけた上での的確な特攻。
そんな一撃を、
しかし、アダムは避けなかった。
ピクリとも動かず、トウシの拳を、顔面で受け止める。
結果は、凄惨。
「……う、うそやろ……」
トウシの渾身をモロに受け止めていながら、
アダムの顔には傷の一つもできなかった。
先ほどの闘いでは一発も当たらなかったため、彼女の防御力に関しては未知数だった。
回避力が高いだけで紙耐久――確率は低いが当たればどうにかなる……というのなら、まだ対処のしようもあった。
前提に可能性があれば、まだ未来を演算していられた。
しかし、彼女に、対処可能な前提など存在しなかった。
アダムは純粋に強い。
全てのスペックが、冗談みたいな超水準。
攻撃力も、防御力も、回避力も、魔力も、オーラの総量も、全てが、最高位。
アダムは強すぎる。
「どうした、ほら、次だ。特別サービスで避けないでいてやるから、さあ、ドンドンこい」
「……う……うぅう……あぁあああ!!」
トウシは考えるのをやめた。
壊れてしまったから。
ガムシャラに、思考を放棄した拳を叩きこみ続ける。
アダムを相手にした場合、いくら考えても無駄で、
なにをしようと、どうしようと、こんな存在には勝てるはずがなくて、
だから、どうしても――
「くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそぉおおおお!」
叫び、もがき、必死になって拳を振り回すが、
当然、意味はまったくない。
当たっているんだが、当たっていないんだか分からなかった。
殴られているアダムもそうだが、殴っているトウシの拳も痛くもかゆくもなかった。
おそらく、アダムは、周波数を調節して、トウシのオーラや魔力を完全に無効化しているのだろう。
おそろしく精密かつ複雑で難易度が高い魅せ技。
この魅せ技は、ハッキリいって、通常の戦闘では使えない。
同格が相手だと、そんな精緻な作業をやっている余裕などない。
つまり、アダムは言外に、こう言っている。
――お前は弱過ぎる。相手にならない。
「ど……」
トウシは、ついに涙を流しながら、
「どうせぇ言うんや……こんなもん……」
「この世の誰よりも高速で頭を回転させられるというのが、貴様の売りなんだろう? なら、ちゃんと考えて攻撃してこい」
トウシの全身から力が抜ける。
必死に支えようとしても、心が、『元気を閉じるフタ』になったみたいで、
腕にも足にも、まったく力が入らない。
「また休憩か? では、先の発言を実行するとしよう。貴様の目の前で、あのキ○ガイ女を圧殺する」
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