イベント?

イベント?



 気がつくと、虹宮たちは、夕方の河川敷にいた。

 西の空に、真っ赤な太陽が沈みそうになっている夕刻。


「ここ……おいおい、まさか……」

「元の世界……?」

「ああ、完全に日本だな」


 河川敷の向こうに見えるデパートの垂れ幕に書かれてある文字は完全に日本語だった。


「帰ってこられた……って……こと?」

「なワケねぇだろ」

「もしかして、いままでのことって、全部夢だったのか……?」


 そこで、虹宮が、


「セブンス、こい」


 掌を上に向けて、そう宣言すると、


「きゅい」


 虹宮の携帯ドラゴン『セブンス』が元気に現れて、虹宮の掌の上にポスンと乗った。


「どうやら、夢ではなかったみたいだね」


「イベントを日本で行うってだけの話か……」

「このまま逃げたら……どうなるかな?」

「殺されるに一票」

「たぶん、特定範囲外に出たら、頭が爆発するガ○ツ形式じゃね?」

「そもそも、逃げるってどこに逃げるんだよ。ブラジルまでいったところで、指パチン一つで、余裕で連れ戻されるだけだと思うぞ」

「こっちに送るのも、あっちへ戻すのも、神様なら楽勝だろうからな」

「神様との闘いに勝つしか、本当の自由を得る方法はない」


 などと話していると、





「おら、もっと本気ではしれ、ごらぁ!」





 少し離れた所から、そんな声が聞こえた。


 反射的に視線を送ってみると、

 バイクに2ケツしているギラギラしたヤンキーが、小柄な少年を背後から追いかけまわしていた。

 少年は、ヒイヒイと息を切らしながら、


「もう……むり……」


 そう言って倒れ込んだ少年に、ヤンキー2匹は、


「はい、30分、バイク並走できませんでしたぁ」

「気合いが足りない。というわけで、罰ゲーム」


 言いながら、ヤンキーAは、クラッカーをとりだすと、

 少年の口につっこんで、


「みごと、無能賞を受賞されましたぁ。ぱんぱかぱーん」


 と言いながら、シッポのヒモをひくと、


「ぶほぉ!!」


 涙を流しながらゲホゲホいっている少年に、ヤンキーBは嬉々として、


「そして、罰金ターイム。これは、ゲームに負けた罰金なので、カツアゲにはなりませぇん」


 言いながら、少年の財布を奪うと、全財産の2500円をを没収して、


「おい、罰金が足りねぇよ」

「どう落とし前つける気だ、あぁん」


 頭を踏みつけられて、上から高圧的に声をかけられた結果、少年は、


「……」


 ブルブルと震えるだけで、何も言えなくなってしまっていた。


 そんな少年の後ろで、ヤンキーAがBに、


「こいつ、確か、お守りみたいなの首からぶらさげてただろ。あの中に入ってないか調べてみろよ」

「ああ、そのパターン、あるな」


 言いながら、Bは、少年の胸倉に手をかけた。

 すると、少年は、


「こ、これは……ダメ……お母さんが……困った時に開けなさいって――」

「つまり、出番がきたってことじゃねぇか」

「やったな、おい。出演チャンスに恵まれて、お守りの中身も喜んでるぞ、きっと」


「だ、だめ……離して……」


「……ぁ?」


 抵抗する少年にイラっとしたBは、両手で少年の頭を掴んで、額に、


「うぁあっっ!!」


 ガツンとヘッドバッドを決めていく。


 激痛にもだえている少年の頬を、追加でバチンと強めにビンタしてから、


「ダメじゃん、その態度。俺のことをイラつかせるとか、ダメじゃん」



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