公式クズ野郎。

公式クズ野郎。


 正式にメンバーが決まり、

 それをアダムに伝え、


「参加者は、蜜波、岡葉、鈴木、佐藤、雷堂、板瀬、味崎の7名……もう変更は出来ないがいいな?」


「はい、問題ありません」


 岡葉がそう言うと、アダムは、


「確認した。では、3分後にイベントを開始する。それまでは、ここで、少し休んでいるといい」


 そう言って、アダムは、その場から瞬間移動で姿を消した。


 と、同時だった。




「よっしゃぁあ! きたぁあ! これで、お前らの命は、俺が握ったってことだぁ!」




 板瀬が全員を見渡して、


「ひざまずけ! 命乞いをしろ! 俺が手を抜いたら、お前ら全員死ぬぞ!」


「……おいおい、急に、どうし――」


 と、岡葉が、板瀬の暴走を止めようとするが、


「足を引っ張られたくなかったら、黙ってろ」


 板瀬は、岡葉の胸倉を掴んですごんでみせた。


「俺はなぁ、最悪、ここで死んでもいいと思ってんだ……分かるか、俺のサイコが」


「……なにを、バカなコトを……」


「生き残れて強化アイテムをもらえれば最良。それは俺にとっても事実。しかし、俺にとって『次点の成果』は、お前ら全員を巻き込んで、ここで死ぬことだ」


「自殺志願者か……」


「違うね。俺は俺の欲望に忠実なだけだ。せっかく得たチャンスを無駄にするのは性に合わないだけとも言える」


「意味がわから――」


「具体的に言ってやる。お前らは現在、俺に生死を握られている。お前らを生かすも殺すも、この俺次第! 俺は、この状況が、たまらなく気持ちいいんだ! イベントが始まるまでの3分間、この状況を満喫させてもらう! というわけで、命乞いをしろ! 全員、俺に土下座して、助けてくださいと懇願しろ! イヤなら別にしなくてもいい。ただ、もし、そうしなければ、俺は、ここからはじまるイベントとやらで、岡葉たちの足をひっぱりまくる! そしたら、どうなる? イマジンしろよ。しなくてもわかるな? すなわち、全員死ぬ! 大変だな! さあ、その最悪を回避するために、お前らは、これから、俺に何をするべきだ? んー?」


「君さぁ……イベントが終わったあと、全員から袋叩きになるかもしれないとか、そういう想像力はないのかな?」


「俺は上位の力を持っていて、かつ、イベントをクリアしたあかつきには、報酬の強化アイテムでさらに強くなっている。もし、俺にナメたマネをかまそうとしてきたら、返り討ちにしてやるさ。あと、お前ら一般人は、俺と闘う時、即座に『殺す』という選択肢は取れないだろう。仮に、その選択肢を取ると決意したとしても、多少は躊躇するだろう――が、俺はしない。俺なら、お前らを迷わず殺せる。この差は大きい!」


「……」


「俺とお前らのサイコ指数の差……その事実・現実を、俺は今、身をもって証明している。さあ、決めろ。俺を敵にまわすか。それとも、全力で媚びへつらうか!」


 そんな板瀬の発言に、全員が躊躇した。

 この場にいるのは、全員、優秀な存在。

 産まれた時から、今日にいたるまで、ずっと『優秀』という地位にあり続けた存在ばかり。

 つまりは、総じてプライドが高いということ。

 『受けてきた評価』が、そのまま『自尊心の程度』に変換されるのは、人の常。


「どうした? プライドが邪魔して、頭が下がらないか? 別にいいさ。なら、イベント中に全力で後悔しろ。俺は、岡葉たちの足を全力で引っ――」


 と、そこで、それまでほとんど表舞台には出ていなかったトウシが、

 唐突に、一歩前へ出て、


「頭ぐらい、いくらでも下げたるわ。やすいもんや」


 そう言って、ガッツリと両膝を地につけて、

 額を地面にこすりつける形で、


「助けてください。お願いします。死にたくないです」


 そんなトウシの後頭部を、

 板瀬は、ムンズっと踏みつけて、


「てめぇみたいなザコモブの安い頭なんざ見たくねぇ。低能が地面を這いつくばるのは、ただの日常。ただの日常に価値はねぇ。俺が見たいのは、とびきり濃厚な非日常」



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