ノーデス!

ノーデス!



「耐えてやる! テメェ(Jジャミ)をノーデスで乗り越えれば、俺は、もう一つ上のステージにいける!!」



 ギリギリのせめぎ合い。

 漏れたエネルギーの電流が、黒くはじけてほとばしる、物騒な戦場。


 高みに達した武のぶつかり合いは――


 ――結局、


「が……ぁ……」


 ジェノサイドタイムが終了し、

 ジャミは元の姿に戻り、地面にへたりこんだ。

 心が折れたワケではなく、足が完全に動かなくなってしまった。


 意志力ではどうにも出来ない、実質的な体力の限界。


「はぁ……はぁ、はぁ……くそ……ジェノサイドタイムを使ったのに……一度も……」


「……殺せなかったな。くく……『本番のジェノサイドタイム』で一度も死ななかったから、『俺』VS『お前』の闘いは完全に俺の勝利って事でいいな」


「ぐぅ……うぅう……」


 屈辱にまみれ、口から血を流すジャミ。

 回復チートのおかげで、すぐに血は止まるが、また、すぐに流れてくる。


(やった、やったぞ……乗り切った……Jジャミとの闘いで、一度も死ななかった。……凄まじいハイペースできている……ここまでは、最善中の最善……いけるかもしれねぇ……センエースを……奪えるかもしれない……)


 歓喜に震えているP型センエース1号の向こう側で、

 『へたりこんだジャミの背中』をみたゼノリカの面々は、シーンと静まり返っていた。



「う……そ、だろ……ジェノサイドタイムを使ったジャミまで……負けた」



 バロールがボソっとそうつぶやく。

 ジャミが辿り着いた世界の遠さを、この場にいる全員が理解している。


 ジャミは遠い場所に辿り着いた。

 今の九華ではどうしようもない、高みの高み。


 そんな高みに達したジャミが、

 切札の変身技まで使ったというのに、

 P型センエースには、あっさりと負けてしまった。


 その絶望は、黒く、広く、深く、ゼノリカの面々を覆い尽していく。


「な、なんなんだよ、あいつ……」


 ワナワナと震えているバロール。

 そんなバロールに同調するように、カティが、


「なんなの、あいつ! ありえなくない?! あんな速度で強くなるヤツなんて、いてたまるかぁああ!」


 叫ぶカティの向こうで、サトロワスが、苦虫をかみつぶしたような顔で、


「まさか、あの者は……本当に……神帝陛下……?」


 その発言に、バロールが激昂して、


「おいぃい! サトロワス! お前、自分が何を言っているのか分かっているのか! 神帝陛下が、われわれに攻撃などするはずがないだろぉおお!」



「だが、あの強さ、あの成長速度……そして、無限転生というスキル……あれは、まさしく、聖典で読んだ神の……」


「似たような力を持っていたら全員神帝陛下か?! お花畑な脳味噌しやがってぇ!!」


 そこで、テリーヌが、バロールの頭をガツンと殴りつけて、


「落ちつけ、バカ野郎!!」

「アアァアアアン?!」


 そこで、テリーヌは、しっかりとバロールの頬を、

 バチンッ!

 と、しばきあげて、


「本当に……落ちつけ……」


 まっすぐに目を見てそう言った。

 真摯なその瞳に、

 バロールは思わず息をのむ。


「……っ」


 気圧されて黙るバロールに、テリーヌは言う。


「世界の安寧のために尽力してきた我々に危害を加えるなど……神帝陛下とは思えない行動だ。私も、あんたと同じで、あのガキのことを神帝陛下だとは思わない。しかし、事実として、聖典に書かれていた神の特徴を有している。その事実を認めずにただ騒いでも、何一つ前には進めない」

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