敗者復活。
敗者復活。
「魔法も剣も実力のうちだ! ジジイ、てめぇが言ってんのは、魔法が使えなければ、剣がいくら使えても関係ないって言ってんのと同じだぞ! ありえねぇだろ!」
「こんな、ムチャクチャ、ゆるされると思うなよ! ごらぁああ!」
「くそが! ふざけんじゃねぇ! 資質では、俺は充分、合格範囲内なんだ! 少なくとも、俺は、一次で落ちるようなザコじゃねぇ! やりなおせぇ!」
ワーワーと、魂の叫びが止まらない不合格者たち。
それら全てを受け止めて、
メービーは、
「そうか。わかった。そこまでいうなら、敗者復活をしてやろう」
そう宣言した。
そこで、ようやく、ホール全体の熱が引いていった。
完全に熱が引いたワケじゃないが、
「……当たり前だ、バカが……」
「つぅか、最初からそう言え」
「いや、というか、最初からそういうつもりだったんだろ……」
「だな。そうじゃなきゃ、流石にありえない」
ブツブツと、小さな不満にまでは収まった。
そんなホール全体を見渡しながら、メービーは、ゆっくりと上着を脱いで、
「最初に言っておくが、私の敗者復活は死ぬほど厳しい。というより、ほぼ確実に死ぬじゃろう。死ぬ覚悟のあるやつだけ、私の目の前まで降りてきなさい」
そう言われて、不合格者たちは怯んだ。
当然の話。
なんせ、冒険者試験の試験官をしているのは、
『フーマーに雇われた上位の冒険者』か『フーマー上層部関係者』のどちらか。
――もし、『メービーに勝てたら合格』という試験だったら、かなり厳しい。
とうぜんだが、『メービーと闘っても絶対に負ける』と思う者は少ない。
だが、冒険者試験の試験官になれるほどの実力者に『絶対に勝てる』と思う者も少ない。
(もし、試験官を任されるに相応しい実力を持っていた場合……かなり厳しい)
(先ほどの発言は、やるなら『殺す』と言っているようなもの……)
(……とはいえ、ここで逃げるというのも……うーむ……)
メービーは、冒険者試験の試験官をしているほどの実力者。
老人なので、パワーやスピードはないだろうが、
しかし、そのかわり、『熟練の技』はハンパじゃないはず。
メービーなど、名前も知らない老人だが、しかし、だから弱いとは限らない。
何十年も昔に冒険者試験に受かり、以降、ひたすら山にこもって修行していた求道者かもしれない。
フーマーの中枢で、上位者として生きてきた者かもしれない。
サードアイが使える者は、とっくの昔にメービーを観察している。
そして、『見えなかった』という結果を得ている。
『フェイクオーラの達人でしかない』という可能性もあるが、
しかし、可能性でいうのなら、最も高い可能性は『相応の実力』であるという可能性。
(流石に殺されはしないだろうが……おれだと、間違いなく、無駄にボコボコになるだけだろうなぁ……)
(冒険者と闘って勝てるとは思っちゃいない……俺は、二次まで行きたいだけなんだ)
(勝つことではなく、引き分けでもいいのなら、どうにかなるかもしれないが……)
不合格者たちは、それぞれの思惑を胸に、メービーが提示してきた『敗者復活試験』に対して『さて、どうしたものか』と二の足を踏んでいる。
そんな、滞った状況の中、
6名ほどが、果敢にも、敗者復活を受けようと、メービーの前まで降りていった。
※ センはまだ様子見をしているため、その6名の中には入っていない。
「私の試験はほぼ死ぬ難易度だと、私はちゃんと言った。よいな。帰るなら、今が最後のチャンスじゃぞ。ここで死ななければ来年受かる可能性はある。ここで死ぬより、来年にかけるほうが間違いなく合理的じゃ」
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