発表会。

発表会。




「今日(こんにち)に至るまで、ボクたちは、三人とも、『師以外の前では、それなりに胸を張れる程度』には頑張ってきました……その発表会を、ぜひ、堪能していただきたく存じます」




 言って、平熱マンは、ダンと地面を蹴って、後方に飛んだ。


 そして、並ぶ。

 5分をかけて積みまくったミシャとゾメガの隣。


「天万手(あましゅ)を使っても、時間稼ぎしか出来ないなんて……ほんと、とんでもないバケモノね」

「……『神器を使った平』と5分も闘ったというのに、傷一つついておらんとは……恐ろし過ぎて、震えが止まらんわい」


 平が稼いだ時間の全てを余す事なく使い、ミシャとゾメガは、ひたすらにバフった。

 その結果、二人のオーラは跳ねあがっている。


 見た目も、だいぶ変わっていて、

 ミシャは、元の愛らしい少女の面影が一ミリも残っていない『奇妙なモンスターの形態』になっており、ゾメガは、筋骨隆々の若々しい二十代前半のような容姿になっている。


 二人が本気で闘う時の姿。

 ある程度上位者になると、変身形態を持つ者は珍しくなくなる。


 ちなみに、現在のミシャとゾメガの姿は、どちらも『最終形態』であり『その前の段階

が、どちらにも七つほどある。


 この二人の場合、普段より『七段階ぶん強くなる』というより、普段は本来の力を『七段階ぶん落として』おり、その代わり、本来の姿に戻ると、ボーナスがつくようにしているといったところ。


「さて、ここからはボクが積んでいきますので、ミシャさん、ゾメガさん……足止めよろしくお願いします」


「任せておけ」

「ゆっくり積んでいいわよ」


 言いながら、ゾメガとミシャは前に出る。


 ――アダムに近づきながら、ミシャが、


「カラミティボックスを使うわ。絶対に止めるから、いい感じのところで、エニグマミーティアを使ってくれる?」

「いい感じのところって……また、ザックリとした注文じゃのう」


 返事をすると同時に、ゾメガは、自身の周囲に、無数のジオメトリを出現させる。


 ――アダムは、そんな二人の会話を聞いて、


(黙って受けてやってもいいが……『抵抗されても通せるかどうか』も見ておいた方がいいか)


 瞬間沸騰した嫉妬にかられて始めた闘いだが、

 主に対して、『彼らの力を肌身で感じるため』と言ってしまった手前、

 ただ暴れまわって終わらせるわけにもいかない。


 平との闘いで、『若干、冷静になった』というのもあり、

 今のアダムの頭は、試験官モード寄りになっていた。


(時間をかけたバフ積みで、それなりにオーラは膨らんでいるようだが……所詮は、想定できた範囲内……その程度なら、容易く対処できる)



 ――アダムは飛翔する。

 空間を高速で駆けて、膨大な規模のジオメトリを組み始めたゾメガのカットに入ろうとした――が、そこで、


「――っ」


 アダムの視界がグニョォっと歪む。

 目の前のほとんどが線になって廻る。


(空間系……魔法じゃない……この私を捕らえるとは、とてつもない展開速度……特殊スキル……スペシャルによる強化も確認……おそろしく強固……『今の私の魔力』では、直(じか)に障(さわ)って解除する事は出来そうにないな……)


 囚われたと理解すると同時に、対処方法を模索する。

 常に高速かつ的確に動く頭脳。

 それは、膨大な経験値を積んできたが故の賜物。


「カラミティボックスから脱出する方法は二つ。私のHPを半分以上削るか、30秒経過するか」


(……暴露のアリア・ギアスを積まれた……『この空間を生成する前提』に組み込まれているものか? それとも、プラスで何か発動するのか?)


「30秒以内に脱出できれば何もなし。もし、30秒以内に、私のHPを半分削れなかったら、カラミティボックス解除後、5秒の完全硬直が発動する。この空間内で、私は、あなたに攻撃できない。この空間に関する暴露が終わってからカウントダウン開始。スタート」




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