了解、マスター

了解、マスター


 そのナメた態度に、まずシグレが、


「なぁ、ニー……『ゼンのアレ』なしの戦力で、あの鬼、殺せそう?」


「たかがヘルズ覇鬼一匹でしょ? 万全のシグレとハルスがいる今なら、ぶっちゃけ余裕だね。それに、あのヘルズ覇鬼、妙なカスタムが施されているせいか、普通の個体より、なんかちょっと弱いし」


 ちなみに、数日前にシグレをボコった『ホルスド・シャドー』は、特殊なアリア・ギアスが積まれていたので、存在値は200近く(レベルは120ちょっと)あり、戦闘力もそこそこだった。

 ホルスド・シャドーと比べれば、『ヘルズ覇鬼(弱)』くらい可愛いもの。


「ただ、ヘルズみたいな超王級クラスを100回近く殺すとなると、我が軍の『総魔力量』的に、ぶっちゃけ、かなりしんどいね」


 『ゼン軍』の戦力はハンパなく、『瞬間最大値』はエゲつないのだが、継戦能力に難がある。


 超王級を相手にするとなれば、勇者もナメプは出来ず、

 シグレのチート召喚獣たちも魔力を消耗しない訳にはいかない。


 そして、当然だが、『セイラ』『ゼン(通常モード)』『シグレ(本体)』の三名はクソの役にも立たない――どころか、相当の足手まとい(いない方がマシ)。


「ラスト数体になれば、『ゼンのアレ』フル投入で楽勝フィニッシュだけど、それまでは、かなりのサバイバルを強いられるよ」


 それを聞きながら、ゼンは、歯噛みして、


(……エグゾギアを途中で解除する事さえできれば……もしくは、試験の形式がこんなんじゃなく、『倒さなければいけないモンスターがこのフロアに全部あつまって』いて、そいつらを皆殺しにすればOKというルールだったなら、100体だろうが100万体だろうが関係なく、鼻息でワンパンなんだが……ったく……)


 自分の能力の使い勝手の悪さに辟易する。

 『攻撃力100億オーバー』という、ジンバブエの一発ギャグのような、とんでもない火力を誇るが、いろいろと融通がきかない力。

 それが、アスラ・エグゾギア‐システム。



 ニーの言葉を飲み込んだシグレが、


「つまり、ここからあたしらは、カツカツのローグゲーを強いられるけど、クリアは決して不可能ではない……そういう事やな?」


「戦力はそろっているからね」


「よっしゃ、ほな、まず、どうしたらええ?」


「ニーとセイラが合体して、ハルスの負担を減らす……とか、どうかな?」


「え、そんなんできんの?」


「合体というか、ニーが一時的に、セイラのスライムスーツになるみたいな感じかな。ほら、ホルスドと闘った時、腕だけ、シグレと合体したでしょ? あの感じ」


「なるほど……いやはや、流石はニー。いついかなる時でも、常に誰よりも輝いとるなぁ。そこに痺れる憧れる」


「こんな状況になっちゃった以上、出し惜しみはできない。ウイゼロもカースソルジャーも全投入して、とにかく被害を最小限に抑えて圧殺しよう」


「ハルスに、あたしのチートがモロバレになるけど、それは?」


「この状況になっちゃった以上、仕方がないね。……ぁあ、あと、前に教えてあげたと思うけど、ハルスは、カースソルジャーと因縁があるから、その辺のフォローよろしくね」


「了解、マスター」


「マスターはシグレだよ」


「ニー、俺は?」


「この戦場だと、ゼンは絶妙に使えないから、クローザーよろしく、ファイナルミッション(終盤でエグゾギア無双)に備え、全力でベンチを温めていて」


「了解、マスター」


「……よーし! 作戦開始だ! ゼン、ト○ンザムは使うなよ!」


 ゼンのかぶせボケにカウンターを決めてきたニーの号令で、動きだす戦場。


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