イキり合い

イキり合い



「おい……そこのザコA。おーい、聞いているか? もし知っていたら、出口とか教えてもらいたいんだけど。なぁ、おい……返事してくれ。もしもーし」



 声をかけてみたが、ゴーレムは応答しない。



「ムシすんなよ、木偶の坊! ぶっこわすぞ!」



 語気が強くなる。

 己の強さに対する自信が、ゴートを強気にさせる。


 ――すると、




『……うるせぇなぁ……カスがぁ……』




 ゴーレムは、モノアイをカァっと光らせながら、ボソっとそうつぶやいた。


 それを受けて、ゴートは、さらに一歩近づいて、



「もしかして、御昼寝中だった? だとしたら、うるさくして悪かった、あやまるよ」



 軽い口調でそう言ってから、


「これ以上、うるさくしないよう、さっさと出ていくことにしよう。ただ、出口がわからないんだ。というわけで、ここから出る方法を教えてくれないか?」



 フッキ・ゴーレムのモノアイが、一瞬、ギンと光り、



『俺を殺せば出られる』



「あ、そうなの? 親切に教えてくれてどうも」



『つまり、方法はない』



 そう言い切った。

 確信を持った発言。


 ゴートのこめかみに、分かりやすく怒りマークが浮かんだ。


(言うねぇ)


 ニコっと笑顔を浮かべて、しかし、目は笑っていなくて、



「……おやおや、随分な自信家さんだな。言っておくが、俺は相当強いぜ。というか、俺は強すぎる。あまり、俺の前で図に乗らないほうが賢明だ」



 そんなゴートの発言に対し、フッキ・ゴーレムは、



『ははははは』



 小馬鹿にしたような笑い声をあげた。

 表情などないが、それでも、感情がしっかりと伝わってくる嘲笑。

 強くイラっとしたゴートは、


「警告はしたぞ。つまり、責任はお前にある。……俺の笑えない強さ、しっかりと教えてやるよ」


 言いながら、ゴーレムを解析しようとしたが、



「……っ?」



 システムを発動するが、変化は起こらなかった。



(……できない……なんで……)



 コメカミに汗が浮かんだ。


 すぐに、



(いや、解析出来ないんじゃない……)


 理解できた。


(俺の……今の演算能力では解析しきれないほどの……)



 1000体の最高位モンスターでも一瞬で解析出来た無敵の力。

 その気になれば、あの10000体のモンスター達も余裕で解析できた力。

 サイコイヴ‐システム。

 究極の神々ですら辿り着いていない世界。

 それほどの力であっても通用していない。

 その意味は、



(つまり、こいつには、それだけの力が……)



『はっ、今なにか、しょうもない小細工をしているな。それがお前の言う笑えない強さか? 滑稽を通り越して哀れだな。確かにそのシステムそのものは素晴らしい。それだけをとれば、充分、評価には値する。真に優れた者が使えば神になれる力。だが、お前が使っているせいでクソ以下のゴミとなっている。まさしく、豚に真珠。猫に小判』


 ケラケラと笑いながら、フッキ・ゴーレムは続けて、


『それほどのシステムを搭載していながら、それでも、存在値が『5億』程度でしかないカス。それがお前だ。存在値が兆の領域にも届いていないカスが、俺の前で図にのるな……本物の強さってやつを教えてやる』



 そう言いながら、ゆっくりと立ちあがった。


 全長五メートル。

 でかいはでかいが、メチャクチャ巨大なサイズという訳でもない。

 だが、凶悪な威圧感を感じた。

 ゴートの全身がブルリと震えた。

 存在値等は見通せないが、その威容が視界に入るだけで、ビリビリと腹の底に響く。



『魂魄の格、次元の違いを……思い知れ』



 ハッキリと向けられた殺意。


 それを受けて、バッキバキの恐怖に駆られたゴートは、反射的に、



「いっ、異次元砲ぉおお!!」



 大量の魔力をこめて、アビス・リザードマンから奪った異次元砲を撃った。

 今の膨大な魔力を持つゴートが使えば、その火力はとんでもない事になる。



 しかし、



『はっ……また、随分と質の低い異次元砲だな……』



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