『究極超神化5センエース』VS『究極完全体アダム』

『究極超神化5センエース』VS『究極完全体アダム』






 アダムの、『負ける気がしない発言』を受けたセンは、

 スっと、あえて表情をフラットにして、


「言ってろ。ちなみに、それな……勘違いだ」


 飛びだしたセン。


 オーラが目に見えて増幅した。

 豪速の拳。

 その辺の神であれば、一撃で爆散する威力。

 だが、アダムの目は、完璧にとらえていた。


(主上様、本当に申し訳ございません……私は……あなた様を完全に超えてしまった……もちろん、あなた様から頂いた指輪で合体した結果ですので、私自身の力だと言い張るつもりはございません……)


 圧縮された時間の中で、アダムは、のんびりと『先の先の先』を見つめていた。

 今のアダムからすれば、センのオーラは、あまりにも直線的すぎる。

 動きが平坦で、味気ないとすら思った。

 アダムは思う。

 ――私は、少し、強くなり過ぎた。


(私は一生、あなた様の下僕……しかし……)


 アダムは抑えきれずに微笑む。

 突如として舞いこんできた幸運と、湧き上がる期待。

 体が熱くなる。

 アダムは思う。

 ――この闘いが終わったら、すぐにでも、押し倒して、まずは、あの麗しい鎖骨をなめる。主の全てを包み込み、堪能し……そして、約束どおり、私の全てを愛撫していただく……


 膨れ上がる妄想。

 それがまもなく現実になるという期待だけで濡れてくる。


 アダムは思う。

 ――このチャンス、絶対に逃さない。




(今。ここ。交渉を成立させるタイミングは今しかない)




 アダムがセンを煽ったのは、『チャンスだ』とふんだから。

 この、何がなんだかわからないままに出来あがった状況。

 なぜ、ユンドラと合体しただけで、これほどまで強くなれたのか。


 不明。

 謎。


 ――いや、実は、なんとなく理解できている。

 ユンドラと合体した直後、ほんの少しだけ、『かつての記憶』が頭をよぎった。






 ――もし、生まれ変われたら、

               こんどは、君のとなりに――







 ゆえに、なんとなくは分かる。

 自分がなんなのか。

 なんだったのか。


 ただ、それも、ぶっちゃけ、曖昧。


 ぼんやり、うっすらと、なんとなく、『そうかもしれない』という程度の認知。

 『~~みたいな過去』があったような気がする。

 その程度。


 つまりは、ほとんど理解できていない。

 どれだけ頭の奥を探っても、それ以上は残っていない。




(もう少し、自分の奥へと潜ってみれば、あるいは、答えに辿りつけるかもしれないが……)




 正直、どうでもよかった。

 クソしょうもない。


 前世など知ったことか。

 それよりも、『今』だ。

 今、『主』は目の前にいる。


 それでいい。

 それだけがすべて。



(私の方が強いとはいえ、それは、合体している間だけの話……そして、この場を支配している妙な空気感は、今だけの熱。このチャンスは逃さない)


 『ここしかない』と焦ったアダムは勢いに乗った。

 冷静になってしまえば出来ない暴挙。


 乗るしかない、このビッグウェーブに。

 つまりは、それだけの話。

 詐欺的手法。

 とにかく、しのごのいわずに、契約を交わして判を押させる。

 考えるスキを与えてはいけない。

 相手の前頭葉を麻痺させろ。

 思考を許すな。


 その無謀がこうをなした。

 結果、手に入れた権利。

 かわすことに成功した約束。

 可能性。




(今日、この日より、あなた様の全てを……私だけのモノに――)




 圧縮された時間が終わりをつげる。


 目の前までせまったセンの拳。


 流石、はやい。

 力強い。

 たくましい。

 素敵っ!



(だが、余裕――)



 今のアダムには届かない。

 速度がたりない。


(紙一重で避けよう……あえて踏み込み、息が触れあう距離で――)


 余裕で回避するつもりのアダム。

 半身になって、右足を一歩ふみこんで、

 二人の物理的距離を縮めよう♪

 なんて、ナメた『お遊び』に興じようとした、


 そんなアダムの、




 ――どてっぱらに、






「ぐふぅううっっっ!!」





 センの拳がつきささる。

 ゴリゴリと骨が砕ける音がアダムの脳内に響く。

 下から上へと酸が込み上げてくる。

 脳天までガツンと響く一撃だった。

 視界がグラッグラしている。

 アダムは思った。

 ――あれ?

 ――これ、死ぬ?






「……心配するな。少し揺らしただけだ」






 フラットな声で、センは、高みから、


「ちゃんと手加減はしてやった。『調子こいたバカ』に説教してきた経験も豊富なんでなぁ、その辺の匙加減も得意なんだよ」


 たんたんとそう言った。


 激痛の中にいるアダムは、殴られた腹をおさえながら、前かがみの姿勢で、


「ごほっ……がふっ……うぇ……」


 驚愕を隠そうともしていない、よだれを垂らした非常にみっともない表情で、


「っ……な、なんで……」


 疑問を口にすることしかできない。

 何が起きたか理解できていない。

 避けたはずだ。

 というか、避ける直前だった。

 いったい、何がどうなって自分はダメージを負った?

 センの動きは直線的だった。

 見えていた。

 理解できていた。

 なのに、どうして……




 ワケガワカラナイ……




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る