200年目~

200年目~



 ・200年目。

 まだ瞑想は続けていた。

 気付いた時、センは、『心の作用』について、理解しかけていた。

 真理は、近づくほどに遠くなる。

 形になりかけるほどに霧散していく。

 あまりにも諸行無常。

 だが、『核はありそうだ』と理解できた。

 中心。

 まだ見えない。

 現象の最奥はまだ遠い。

 未だ見ぬ世界は遠い。

 だが、時間はまだまだある。

 センの精神は、さらなる段階に至っていた。











 ・300年目


 もっと奥へ。

 もっと、もっと、奥へ。

 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと。



 ――長き瞑想の果てに、

 真理は『ない』と理解できた。

 心は、ここになかった。

 魂は、ただの器でしかなかった。

 そこに何が満たされているか。

 少しだけ理解する。

 くだらないカケラ。

 それだけが全て。

 0と1が並んでいるだけに見えて、その奥には、

 それすら虚像に過ぎないという結果だけがあった。

 無為が等間隔で並んでいて、

 法を守るための法だけが、

 まるで、ウロボロスのように、

 互いのしっぽをかじりあっていたんだ。


 ここがどこか。


 誰もが、

 何もかもが、

 いつだって無様に、

 『答えのない問い』だけを追い続けている。
























 ・500年目。

『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!』

『ちょっと待てぇえええ!』

『まだ、500年かぁああああい!!』

『ウソだろ?! 俺の頭、だいぶ遠いところまでいったぞぉおお!』

『なんか、悟った的な感じになったけど、まだ500年?!』

『もういいだろ! そこは、もう、【気付いた時には、200億年が経っていた……】ってなるパターンだろぉおおお! 空気を読めよ!! 流れを感じ取れよぉお!』

『あと、199億9999万9500年?!』

『アホかぁああああ!!』

『ふざけんじゃねぇええええ!!』















 ・1000年目。

 センは、また瞑想に戻っていた。

 悟った気になるのはもうやめた。

 賢(さか)しらに、分かった気になったところで、何にもならないと理解した上で、

 その上で、

 センは、本当に悟ってみようと思った。

 世界を、運命を、自分を、

 真に理解しようと試みる。

 すべては暇つぶしなり。



















 ・2000年目。

 センはついに瞑想を終えて、立ちあがった。

 黙ったまま周囲を確認する。

 見えている風景は変わらない。

 しかし、確かに変わっている事があった。

『俺、なんでここにいるんだっけ……』

 深い深い問い。

 なぜここにいるのか。

 真の意味で理解を求めた問い。

『ああ、シューリを助けるためか』

 答えはアッサリと出た。

 その事に、センは、驚いた。


 本心だったのか、

 と、素で思って、苦笑した。


『なんつーか、俺……あいつに対してマジなんだな……』

『あいつの何がそんなにいいんだ?』

『顔はいいけど、性格は最悪だぞ』

『ひねくれていて、口が悪くて、人を常に見下していて、現世の生き物をまるごと虫あつかい』

『あんな、性悪女、死んだ方が世界のためだろ』

『邪神を鎮めるための生贄として命を捧げさせた方が世の中のため』

『うん、間違いない』

『間違いない、が』

 センは笑う。

 静かな微笑み。

『だから、なんだ? 世界の事なんか、知ったことかっての』











 ・1万年目

『ついに来たな。一万年……』

『実は【何年に設定しようと、一万年で外に出てしまいます、残念でしたー】ってオチを少し期待していたんだが……どうやら、俺の現実は、そんなにぬるくないらしい』

『まあ、いいさ』

『見えてきたところだ』

『自分の戦闘力、その輪郭が……』

『ようやく見えてきた』

『俺は、まだ、弱い……』

『まだ足りない』

『邪神には勝てるかもしれないが……』

『あれ以上の悪が出てきたら厳しい』

『本当の強さがいる』




『俺は、まだ、何にも辿りつけていない』


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