神様はすごいんだもん! ほんとだもん!

神様はすごいんだもん! ほんとだもん!




「あ、アホをぬかすな、アンドロメダ! 聖典に書かれている神帝陛下の伝説と言えば、

 ・鮮血時代を一人で治めた。

 とか、

 ・神をも超えし、すべての魔を司る王『ゾメガ・オルゴレアム剛魔至天帝陛下』と、輝く勇の極致『平熱マン聖剣至天帝陛下』と、全てを飲み込む闇の化身であらせられる『ミシャンド/ラ邪幻至天帝陛下』という、究極の領域に至られた御三方ですら太刀打ちできなかった『異界よりのバケモノ計10000体』を『一人で倒した』

 などという、言い方は悪いが『間違ったプロパガンダ』、

 もっとはっきり言えば、『子供の冗談』みたいな伝説ばかりじゃぞ?」



「その伝説は事実なんじゃよ。実際、その異界よりのバケモノとの闘いで、後方支援部隊の一軍を任されて奮闘したのが、私のご先祖様であり、その功績があったからこそ、我が家名は世界に轟き――」


「いやいやいやいや! 流石にありえない! 仮に、神帝陛下という超越者が、かつて実在していたとしても、至天帝陛下達ですら勝てぬバケモノを10000体も一人で倒すなど、絶対にありえんっ」


「第2~第9アルファが大混乱に陥った未曾有の異世界大戦を『一人』で治めるなど、そんなもん、単純に不可能で――」


「そんなものは可愛い伝説じゃろう。神帝陛下の伝説筆頭といえば、やはり、あれじゃろう? 地に降りてきた『荒ぶる神』と相討ちした後、神の世界に召され、そこで全ての神を超えて神の神になったという」


「その時、全ての神が恐れる究極の邪神をも倒したとか?」


「まさしく子供の妄想――」




「ぜんぶ、事実じゃよ」




「なワケあるか!」


「なんじゃ、神の神って! 現実であってたまるか!」


「事実なんじゃよ。ワシだってどこまで正確なのかは知らんが、事実である事は間違いないらしい。実際、パメラノ猊下は、神の神になった神帝陛下とお会いし、その威光に触れた事があると仰っていたしのう」


(それ、パメラノ猊下がボケられただけの話じゃ……)


(聖典については、常々思っておったんじゃよなぁ……せめて、もう少し、まともな嘘にせんと、誰も信じんと……)


(というか、いらんのじゃよ、『全てを超えた神の偶像』など……三至天帝の御方々が、すでに、一生をかけても崇拝しきれない果てなき頂点なんじゃから)




「どうやら、誰も信じておらんようじゃのう……まあ、別に構わんがのう……『全てを超えし偉大なる神』が実在しようがしまいが、どうせ私ら風情ではお会いする事など永遠に叶わんし……報酬が報酬じゃから、誰も手を抜かんじゃろうし」



「そもそも、天上からの命令じゃぞ? 仮に報酬がなかったとしても、手を抜くなどありえん」


「まあ、のう」



 結局、




 ――パメラノ猊下は、どうやら、ちょっとアレらしい――




 という事で全体における心の働きはまとまった。

 神などという、ありえない存在の事を論じている暇はない。

 神の武勇伝に関する詳細などは、神学者や吟遊詩人に任せておけばいいのだ。






「――この世界の国家に関する資料は?」

「ここじゃ」

「列強は六国か……ふむ、六国しかないのか。ずいぶんと少ないのう」

「小国は、すべて、かつての帝国に飲み込まれ、今は魔王国に討たれたと」

「帝国の中枢や軍属はほぼ全員が処刑されたのか……」

「血の歴史じゃな」

「逃げのびた者は、各地で盗賊等に為り果てた、と」

「みじめ、みじめ」

「帝国の残りカスは、すべて、フーマーが取りこんだみたいじゃのう」

「で、現在、元帝国の領土はフーマーの植民地のような扱いを受けていると――」



 たんたんと、

 まっすぐに、



「――エックス級を相手にするとなると……ゼノリカの力は強すぎるのう」

「少しでも無茶を通せば、秩序が乱れる」

「細かな調整が必須となるのう」

「我々は、概念としての『悪の組織』の管理運営に尽力し、実行は、もっと下に任せるのがよさそうじゃな」

「賛成じゃ。裏側だけに根付かせる巨悪のイメージ戦略となると、もろもろ、手間暇かかりそうじゃしのう」


 十人蒼天の会議は、いつだって最短の道をひた進む。

 イタズラに遅らせようとする者などいないから。


「楽連の上位は使えんか……」

「いや、まて……戦闘要員の方は、むしろ下位の方が使いづらい。手加減のコントロールが難しくなる」

「楽連と百済は、上位を使った方がよいか」

「この世界の『現時点』における基本的な支配構造、その本質は変えずに、巨大な闇として忍び寄れ……難しくはないが、なかなかしんどい注文じゃのう」

「悪意は大胆に、されど、混沌は丁寧に……」

「上位のコマを使うとして……どこに、どれだけまわす?」


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