ユンドラとアダムが二人で戦えばいけんじゃね?
ユンドラとアダムが二人で戦えばいけんじゃね?
「信じられねぇ……アダムより強いヤツなんて、いたらダメなんだけどなぁ……」
『修羅の彼方』で強化されて以降のアダムは、最善手を打ち続けているが、どれも二手損で終わっている。
圧倒的な格差はないが、明確な力量差がそこにはあった。
戦闘力はともかく、存在値に差がありすぎる。
「……アダムの強さは、全世界最強クラスなんだぞ……なに、あっさり上回ってんだよ、あの犬……ふざけやがって……」
「認めるわ。彼女は強い。信じられないくらい強い。まさか、外界に……いえ、異世界だったかしら。ともかく、アレ以外でワタシよりも強い者が存在するなんて思わなかったわ」
「……まあ、お前の強さも大概だからなぁ。その自意識は決して笑えるものじゃない。お前の強さは、充分、常識の範囲外にある。アダムが、それ以上に異常ってだけで」
「……彼女…………アダムは、素晴らしい」
膨大な魔力を捻出し、無数の美しいグリムアーツをくりだすアダムの姿を見て、ユンドラは感嘆する。
「彼女の強さは神の領域にある。アダム……恐ろしい龍人。けれど、それでも届かない。それが『アレ』。全てを超越した『神の傑作』サイコウイング・ケルベロスゼロ・タナトス(決戦仕様)。誰が何をしても勝てないバケモノの中のバケモノ」
(誰が何をしても……ねぇ。まあ、現世のヤツがアレを殺すのは確かにムリだな。神でも、アレを殺せるヤツは、そう多くねぇ。『真なる神』の中堅どころでギリってところか)
「アレがいる限り、ワタシは外には出られない。もう、分かったでしょう。彼女を連れて逃げなさい。このエリアから外に出れば、もうアレは、あなた達を追わない。アレは、ワタシをここに留めるためだけに存在しているから。あなた達の死を望みはしない」
「確かに、アダム一人では厳しそうだなぁ……だが、」
センは、そこで、ユンドラに視線を向け、
「あの駄犬……お前と二人で闘えば、ギリギリ倒せるんじゃないか?」
「何を根拠に……アレの強さは、二人で闘えばどうにかなるとか、そういう次元じゃ――」
「俺の見立てだと、勝率は20%だ。いくつかの奇跡を必要とする難事なのは事実だが、決して可能性はゼロじゃない。――お前も分かってんだろ?」
「……」
可能性がゼロじゃない事くらいは分かっている。
彼女は理解している。
――アダムは強い。
――自分だって強い。
だから、可能性はある。
二対一なら、あるいは――
けれど、アレは神の傑作。
わずかな可能性など、それこそ、簡単に殺してくる可能性の方がはるかに高い――
アレにあらがうのは無謀。
手を出すべきではないタブー。
――センは言う。
「踏み込んだ経験がないヤツは、最初の一歩を渋る。そうやって躊躇している間に、『やらなくていい理由』の探し方ばかりうまくなる。人間だろうが虫だろうが、それは変わらない。なぜなら、それが、魂の理(ことわり)だから。『危険を回避するために必要』って言い訳は、いつだって優しくて甘い」
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