102

102



 投下された17個のサイコロ。


 その結果を見て、センは絶句していた。


(バカ……な……)


 全てのサイコロの出目が6。

 計102。

 最高値。


(ぁ、ありえない……いや、もちろん、百%あり得ない訳ではないが……しかし……)



 絶句しているセンの横で、結果を見たシグレは、


「うわ、なにこれ、絶対にウソやん。……ははっ……なんや、神様。ごちゃごちゃ言うとったけど、結局、チートをくれる気やったんやんか。あ、もしかして、神様、ツンデレさん?」


 などと言っているシグレの事は無視して、センは、頭の中で、


(こいつのアルファ人にしては低すぎるクソステータスは……まさか、アリア・ギアスによる代償? 必ずダイスで6を引けるように……ぁ、ありえるのか? この状況をみこして、事前に、自身へ、そのような――って、いや、バカか。混乱してんじゃねぇ。ナノ・スピリットがいない第一アルファじゃ、アリア・ギアスは使えない。そもそも、仮に、そんなアリア・ギアスがかかっていたとしても、Dアイデンティティには通用しない。じゃあ、まさか、本当に……? しかし、現実問題、あるのか、そんなこと? 6分の1を17回連続だぞ……この場面で、そんな確率を当てる豪運なんてものが、本当に……)


「ちょ、神様? どしたん?」


 シグレの問いかけを無視して、


(偶然なのか? ……いや、しかし、それ以外……)


 そこで、センはDアイデンティティを拾って、


(何かしらの不具合でも起きたのか? ……いや、しかし、俺が、それなりの時間と労力をかけて創った究極超神器だぞ。不具合など起きてたま……ん?)



 ――異変を感じたセンは、その、『見た目には何の変哲もないサイコロ』の、1と6の面を左手の親指と人差し指で掴み、


「オープン」


 そう言うと、サイコロの上に、エアディスプレイが浮かぶ。

 ウィンドウに右手で触れて、サササっと操作していく――その途中で、


「なぁっっ?!!!」


 センの顔に、大量の冷や汗が浮かぶ。


「…………さ……障(さわ)られている……」


 ドクンと心臓が脈打つ。


「だ、誰が……ぃや、無理だ……ありえない……現世で……究極超神器に障るなど……」


 あまりの異常事態に、センの体が震えた。


(どのレベルの力があれば可能だ? いや、そもそも、可能なのか? 俺に出来ない事なんだぞ。ど、どうなっている? ほんとうに、いったい――)






「なぁ、ちょっ! 聞いてる?!」





 袖をひっぱられて、センはハっとする。


 顔をあげて、シグレの目を見つめ、


「……お前か?」


「は?」


「何をした? 答えろ」


「何って……言われた通り、サイコロを振ったんやんか。それ以外の何に見えたん?」


(とぼけている顔じゃない……だが……)


 センは、そこで、


「さわるぞ」


 バっと手を伸ばして、シグレの頭を掴む。


「えっ、ちょっ、なに? なんなん?!」


 騒ぐシグレなど意に介さず、センは、シグレの頭を探っていく。


 しかし――


「……ない。不自然な所は何も……こいつは、どこからどう見ても、ただ不幸指数が僅かに高いだけの女子高生でしかない……こいつが、何かをした訳じゃない……のか……」


「ちょっ、ちょっ! まさか、今、あたしの全部を覗いてんの?! やめてや! 見られたぁないって言うたやん!」


 強引にセンの手を払いのけ、三歩ほど後ろにさがるシグレ。


 センは、そんな彼女から視線を外し、


(こいつじゃない……だが、確実に、『誰か』が『何か』をした……どこのどいつか知らんが……この俺を相手に、随分とナメたマネをしてくれるじゃないか……)



「見たん?! あたしの恥ずかしい事とか、全部見たん?!」


 シグレは、青ざめた顔で、


「まさか、小5の時のアレとか、見てないやろうな! もし、見られてたら、忘れるまで、脳をシェイクさせてもらうで!」


「心配するな」


「ほんまに? ほんまに見てない?!」


「夜尿症(オネショ)は、高学年でも、クラスに2~3人は抱えているヤツがいる、頻度の高い病気だ。珍しいのは確かだが、小5でやっちまっても、異常ってほどじゃない」


「最悪やぁああ!!」



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