見せてやるよ、希望。

見せてやるよ、希望。


『……もう……どうしたらいいか、分からないのです。この、クソ以下の地獄でしかない戦争を終わらせたい! しかし、ボクの力ではどうする事もできないのです! 戦火は広がり続ける! バカは裏切りを! クズは死を撒き散らす! 終わらない、終わらない、終わらない! ボクは! いったい、なんのために!』


 絶望を叫ぶ『平熱マン(センの弟子の一人。邪神ミシャや超魔王ゾメガに匹敵する究極の勇者。名前はふざけているが、実力は最強クラス)』に、センは言う。


『――前を向け、平』


『師よ! ボクは! 自分の無力さが憎い! ボクは――』


『命令だ。前を向け』


『……』


『答えろ。お前の目の前には、誰がいる?』


『……師が』


『そうだ。ここには俺がいる』


 センは、ニっと太陽を巻きこむように笑って、


『見せてやるよ、希望。殺してやるよ、全部。豊かさを履き違えて幻想の既得権にとり憑かれたゴキブリどもを、神を理由にして自分の弱さから逃げるバカどもを、戦争を終わらせまいとする悪意そのものを、不条理を、不合理を、……グッチャグッチャになった、疑心暗鬼という世界のコード、その混沌を、……全部、まるごと、たたっ切って、前よりも綺麗に結び直してやるよ。根こそぎ、終わらせてやる。すべての絶望を殺してやる。世界を救ってやる』


『師よ……しかし……』


『黙って聞いてろ。今、世界に響かせる。俺の想い……俺の全部……』


 センは、肺が爆発するほど息を吸って、








『ヒーロー見参!!!』








 『虚像の光』を叫び、センは戦火に身を投じた。

 センは、『英雄なんて偶像』を信じられるほど幼くはなかった。

 けれど、センは、血に濡れて、ボロ雑巾になりながら、

 それでも、ヒーローを『騙り』ながら、命を燃やして、闘い続けた。


 その背中に、多くの者がついてきた。

 ハッキリ言おう。

 騙したんだ。

 『俺は英雄だ』と、

 『だから大丈夫だ』と、

 真っ赤な大嘘をついて、

 盛大に世の中を騙して、

 『地道』に、勢力を拡大させていった。




 叫べば終わる戦争などない。

 尺の決まった特撮じゃないんだ。

 地獄は決めゼリフ一つじゃ終わらない。



 戦争は長く続いた。

 多くの血が流れた。

 戦火が広がりすぎた。

 それぞれの世界が有する戦力が強大すぎた。





 ~~の条約が結ばれれば、どうにか終わる。

 そう思った矢先、破壊工作でおじゃん。

 ~~かけはしとなろうとした世界があった。

 その世界は、

 『まだ、この戦争を終わらせてもらっては困るのですよ』

 クズ共の手によって、『消滅』した。

 平和を愛した世界が消滅したことで、戦争は加速した。



 戦争は次のステージに至った。

 世界の消滅をきっかけに、平和を愛している者まで、武器をとったからだ。

 脆い正義は、より憤怒を燃え上がらせる。

 正義感は、何をしても許されるという大義名分、心の免罪符になった。


 多くが、正義を叫んで目の前の命を壊す。

 武の才能のある者は、子供でも容赦なく投入して、

 押し切ろうとして、耐えられ、被害だけが増えて――


 なんども、なんども、

 なんども、なんども、


 そんな事ばかりを繰り返して――


 どうにか整ってきた『平和』を叫ぶ勢力と、

 もろい弱さと身勝手に駆られた対抗勢力と、

 どちらにも属さないコウモリの第三勢力と、

 どこにでもいる不気味なダークホースとが、


 くりかえす。

 終わりなく。


 『地味』な地獄が、延々と続く。

 70年。

 泥沼になった地獄が、さらに地獄を呼ぶ。



 悪意と憎悪は、収まりかけた火種を胞子のように撒き散らす。


 『統制されていない生命』という『業』。

 むき出しの『魔』が、鬼や龍を超えた悪そのものとなり、世界を覆い尽くす。

 このまま世界は、ゆるやかに死んでいく。

 誰もがそう思った。

 センを信じた者たちも、

 最後には、みんな諦めた。


 ――むりだ。

     これは終わらない――






 ……それでも、センは、闘い続けた。


 全世界の誰よりも、その身に傷を刻みながら、

 どんな地獄を前にしても、


 それでも!!






 ――皆が望むヒーローを演じ続けた――


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