第4話 疲れた

「ねぇねぇ、どこから来たの?」


「どうしてうちの学校に?」


「彼氏は・・・彼氏はいるの?」


「何か趣味ってある?」


(うるせぇ〜)


朝のホームルームが終わると一斉にクラスのほとんどの人が黒川に群がり始めた。いつもなら休み時間は睡眠時間にあてているのに今日は、とてもじゃないが寝れそうにない。


それくらい多くの人が駆けつけているし、騒がしい。どことなく黒川の笑顔も引きつっているように見える。


助け舟を出してやりたいがスクールカースト底辺の俺にはどうすることも出来ないので大人しく見守ることにした。


◇ ◇ ◇


「俺は、帰ってきたぞーーー」


帰ってそうそう年甲斐もなくはしゃいでしまった。普通なら近所迷惑かもしれないが俺が住んでいる家はきちんと防音対策が取られているので大丈夫だ。


俺は、今日一日中寝ることが出来なかった。普段は、人と話さないのもあって静かに休み時間を寝て過ごせるのだが今日に限っては無理だった。主に黒川の件で周りがとても騒がしかったせいで。(黒川の席が隣なのもあるかもしれない)普段真面目に受けている授業で危うく寝そうになるくらいには大変だった。


そのせいか今日の学校はかなりストレスが溜まった。ストレスを解消させるためにも急いで晩飯と宿題を終わらせ、ゲームをしなくてはならない。それくらいの緊急事態だ。


俺は、部活動に所属してないので晩飯の買い出しを含めて大体17:30ぐらいに家に着く。


そこから全力で宿題を済ませること1時間。晩飯用に買った豚バラ肉を焼き、塩胡椒で味付けしてご飯に乗せて食べる。いつもならもっとちゃんと作るが今日はそんなことはしない。少しでもゲームに割く時間を増やし、ヒャッハーしてストレスを抑えるためだ。


18:00ようやくあらかたやるべき事は終わった。後は、ゲームを終えた後に風呂に入るくらいだ。


部屋に着いた俺は、早速ゲームの準備をする。VRMMOのゲームだけあって配線がややこしいのだけが難点だ。


「よし。ボス狩りじゃあーー」


ゲームをつけた俺は、早速ボス狩りに行くことにした。









「これでトドメだ。『アークスラッシュ』」


「グォォォォォォォ」


「ふう、疲れたぁ。」


俺は気がつけば火竜、水竜、風竜、土竜、白竜、黒竜の属性竜シリーズを全部狩っていた。


普段ならこんな極悪な相手に1人で挑みはしないのだが挑んで狩るあたりそれぐらいストレスが溜まっていたのだろう。


気がつけばもう21:00になろうとしていた。


(もうやめようかな?)


ストレス発散もできたので寝ようかと思い、ログアウトしようとした矢先にメッセージが届いた。


「クロからだ。」


ユウくんヘ


ギルドハウスに来てね。待ってるよ〜


クロより


(あっ、行かなきゃ。ポーカーフェイス。ポーカーフェイス。)


俺とクロは、4人の小規模ギルドに所属している。ちなみに俺がギルドマスターとなっている。ギルドに所属している人は各ギルドで拠点を持つことが出来る。それがギルドハウスというもので俺は、この3人の他にギルドに入れるつもりはなかったので結構小さめなギルドハウスを持っている。とは言っても4人にしたら十分でかい。


「やぁ、クロ。どうしーー」


「ユウくん〜〜」


平然を装った俺が入ると勢いよくクロが抱きついてきた。流石にどう反応すればいいのか分からない。


軽く抱きしめてみると男性にはない女性特有の柔らかさを感じ、少し恥ずかしかったがクロは、嫌がる素振りを見せなかったのでそのままにしておいた。


「ごめん。もう大丈夫だから。」


数分経つとクロは、立ち直っていたので腕から開放した。本当はもっと抱きしめていたかったが我慢しなければならない。ゲーム内なのにとてもいい香りがした。


「とりあえず、座ってね。」


「お、おう。」


部屋にある椅子に机を隔てて向き合うように座った。そこにはいつの間にか用意されたお茶があった。


「それでどうしたの?」


「え、いや、うーん。」


「そんなに歯切れが悪いってことはリアル関係じゃないのか?それなら言わなくていいんだよ?」


「いや大丈夫。ユウくんなら平気だよ。」


「そ、そう?ありがとう。」


「と言っても簡単な話だよ。私が今まで忙しかったのって高校に転入するためだったんだ。」


「ふむふむ」


(やっぱりそうなのね)


「それでね。今日がその学校に転入する日だったんだけど女子はまだいいんだけどさ、男子が鬱陶しかったんだよね。彼氏は?とかずっと聞いてくるし、いやらしい目付きで見てくるし、見た目しか見てくれないのが丸わかりなんだよ。」


「あはは。クロは、可愛いから仕方ないね。」


(いやもう確定でクロは、黒川紗帆だね。)


「ありがと。ということでユウくんデートできない?」


「な!?」


(落ち着け、落ち着け。お茶を飲んでリラックスだ。)


俺は、お茶を飲み、荒ぶる魂を抑え込んだ。


「あっ、もちろんゲーム内でだよ。」


「・・・そうだよな。」


現実で彼女デートなんてできたら最高だろうが俺は嫉妬の嵐で殺されてしまうだろう。だが万が一にもそれはあり得ないだろう。基本的にゲーム内で現実の話をするのは、暗黙の了解でいけないことになっている。あくまでこれは、ゲームであって現実ではないからだ。


「じゃあ、先に準備してくるから噴水広場で待っててね。」


「分かったよ。」


(とりあえず今は楽しむか。)


こうして俺は、かなり遅い時間なもののデートのためにいったんマイスペースに戻った。

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