第2話 うそやん

「ん・・・朝か・・・」


俺ーーー大城雄大の朝はちょっとだけ早い。眼鏡をかけ、目覚まし時計を止め、顔を洗う。


俺は、とある高校に通っている。偏差値60ちょいのある程度の進学校だ。


一人暮らしをしているせいか洗濯や掃除に料理など全てこなさないといけないのでいつも早めに起きている。


親はどうしたのかと聞かれるとちゃんと生きている。中学生の途中ぐらいから父さんが海外に転勤することが決まって海外で働いている。母さんは母さんで世界中を飛び回っている。正直、何の仕事をしているのかすごく気になる。最初は、父さんか母さんについて行くのかなと思っていたが将来的に帰ってくるみたいだからと1人で日本に残ることとなった。でもその代わりと言ってもいいのか毎月かなりの額の生活費兼お小遣いを振り込んでくれるので助かっている。主にバイトをせずに済むのでその時間をゲームとか宿題とかに回すことが出来るから。


この日も朝早くから弁当を作っている。この生活も慣れたものでかれこれ3年くらいは続いている。


「よ〜し、出来た。次は・・・」


弁当を作り終えた俺は、次に朝ごはんを作る。と言っても食パンをオーブンで焼いてバターを塗る程度だ。


「ちょっとやばいかも」


時計を確認すると7時45分とかなり危うい時間となっている。俺は、慌ててパンを食べ尽くして急いで駅へとダッシュした。



「なんとか間に合った。」


ちょっと今日は、ゆっくりしすぎたようだった。それでもなんとかいつも狙っている時間の電車に乗り込むことが出来て良かった。基本的にいつも乗ったら遅刻ギリギリの時間帯の2本前の電車に乗っている。ギリギリの時間に学校につくのは嫌だからね。


そのまま10分ほど電車に乗って、そこから歩いて学校へ向かった。やはりこの時間帯になると学校にいる人がかなり増えてくる。中には友達や恋人と一緒に来たりする人もいる。ぼっちの俺には、関係ないが・・・


教室の中に入り、自分の席に着席すると1人の生徒がこっちにやってきた。


「よっ、雄大。おはよ」


「おはよう、智哉。」


彼の名前は、佐伯智哉。小学校の頃からのいわゆる腐れ縁というやつだ。見た目もかっこいい上にコミュ力も高いために友達も多いし、その上彼女もいる。俺とは、真反対の存在だ。なのにも関わらずよく気にかけてくる。こういう気遣いが出来るところが彼の人気の所以だろう。正直、彼がいなければ俺は誰とも話してないんじゃないだろうか?それぐらいに俺は、人と関わろうとしていない。もちろん、話しかけてくれたら返すくらいはしているが


「今日、転校生が来るって話。聞いてるか?」


「何それ?」


「やっぱ知らないのか。なんでもすごく頭のいい子でしかも女の子らしいぞ。」


「怒られても知らないからな?」


「いやでもやっぱ気になるだろ?女の子だぞ?かわいいかもしれないだろ?」


「やっぱ1回殴られとけ。」


智哉と話していると教室のドアが開けられた。


「おーい、席につけ。」


「おっと、じゃあな。」


先生の名前は、川中大輔。30代の先生なのだが年々減り気味の髪の毛に悩ませられている。ちなみに絶賛彼女募集中らしい。


「今日は転校生がいるからみんなに紹介する。入ってきてくれ。」


「「「「「おぉ〜」」」」」


胸ぐらいまであるサラッとした綺麗な黒髪。遠目でもある整った顔立ちに透き通るかのような綺麗な瞳。細くしなやかなそのスタイルは、見る者の目を引き寄せてしまう。


(あれ、ちょっと待ってくれよ。)


転校生の美貌にクラスの全員が声を上げている中、俺だけが少し違和感を覚えていた。


「とりあえず、自己紹介を頼めるかな?」


「はい。黒川紗帆と言います。皆さんよろしくお願いしますね。」


(え?うそだろ!)


俺は、智也みたいにクラスの中心人物になれるような社交力というかカリスマみたいなものはない。むしろ隅で穏やかにしていたい所存だ。そのため、周りの人の様子を観察するのを大事にしている。


あらかじめそなえておくことでもめ事などをなくすためだ。それは、ゲーム内でもやっている。とは言えゲーム内だと目的が違う。


相手の特技、苦手なこと、性格。それを知っておくだけでも危機回避につながる。とは言えゲーム内の自分を俺は別人だと思っている。トッププレイヤーを目指すものとして情報収集は欠かせない。


特にのこととなればなおさらだ。


(やっぱりクロだよな。)


「あぁ、どうしよう。」


髪と瞳の色こそ違うもののいつもゲーム内でよく見るとてつもなく見覚えのある顔に俺は、頭を抱えた。

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