異国の君に恋をして。

ダイナイ

異国の君に恋をして。

 まだ桜の木に花が綺麗に咲いている頃、外で親友のマリーとお昼を食べていた。

 私は、マリーにあることを話すことにした。


「私、恋をしたわ」


「いきなりどうしたのサーシャ」


 私が唐突に恋をしたことを報告したから、マリーは驚いた様子でそう言う。

 普段、私から恋の話をすることはないので、余計珍しがっているようだ。


「まだ名前は分からないのだけど、一目惚れしちゃったみたいなの」


「ふーん。で、相手は誰だなのよ」


 私が一目惚れしたのは、黒髪で黒い瞳をした背は決して高いとは言えない少年だった。

 違うクラスで名前も知らない彼だけど、外国人ということで学校でも話題になっていた。

 そのことをマリーに伝える。


「あー、留学生くんか。サーシャが彼のことをねぇ」


「な、何よ、私だって恋くらいするわよ」


「好きなら告白してみたらいいんじゃないかな。サーシャなら断る男子なんていないと思うけど」


「告白か......」


「初めは名前だけでも聞いて友達から始めてみたらどう?」


 いきなり告白をすると言う手段は、思い付かなかった。

 やっぱりマリーに話して良かったかもしれない。


「まぁけど、彼って変わってるらしいよ。クラスの自己紹介を拒否したって噂だよ」


 そんな私の様子を見てマリーは、彼の噂を教えてくれた。


「外国人だもの、少しくらい変わってても仕方ないわよ」


 自己紹介を拒否するなんて、確かに変わっている。

 だけど、文化も歴史も言語さえも違うのだから、彼なりに思う所があるのかもしれない。

 それに、噂話はあくまで噂であって、私が直接見聞きしたわけではない。


 初めて一目惚れした相手が、遠く離れた異国の地の人だなんて思わなかった。

 この気持ちを伝えて、友達からでも良いから彼と少しでも関係を持ちたい。


 ◇


 放課後になって、目の前を歩いていた彼を見つける。

 私は秘めた思いを伝えるために、彼の元へと走った。


「あ、あの私はサーシャです。いきなりこんなことを言うのは悪いとは思ったのだけど、貴方のことが好きなの。一目惚れしちゃったみたい。名前だけでも教えて貰えないかな?」


「oh no......」


 それを聞いた時、私は目に涙が浮かぶ。

 告白をしても、断られる可能性があることも考慮していた。

 しかし、名前すら教えて貰えないとは思ってもいなかった。


 その場に留まり続けることが出来なくなって、走り出す。

 目の前にいた彼に泣いている姿を見られたくないし、泣いている自分を惨めにしたいためにも、私は走り出した。


「——」


 彼は後ろで何かを発言したみたいだったけれど、その言葉の意味は私には分からなかった。

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