第315話 猟友会の対応(2)
「たしかに……そうですね」
「はい。ですから、お爺ちゃんのことは、お爺ちゃんたちを信じて待っていればいいと思います。何か、あれば連絡してくれますから」
「そうですね。わかりました」
「それより五郎さん」
「はい?」
「猟友会の方をお出迎えしないといけませんよ?」
「そうですね。村長は、俺の店に来ると言っていたので待っていればくると思うので、雪音さんは母屋に戻っていてください。俺は駐車場で待っていますから」
「分かりました」
雪音さんを母屋へと帰らせ、俺は駐車場で猟友会の人が来るのを待つ。
そして40分ほどしたところでハイエースが3台、月山雑貨店の駐車場へと入ってきた。
車の中からは、若い人は40代から年配の方になると60代の男性がおりてくる。
その中でも、一番、年を経ているように思われる男が近寄ってくる。
「秋田猟友会の者だが――、ここの駐車場で出迎えてくれたという事は、儂らに山狩りを依頼した月山五郎というのはアンタで合っているのか?」
「はい。月山五郎と言います」
「そうか。俺は、秋田県猟友会副会長をしている楠木(くすのき) 権三郎(ごんざぶろう)と言う。今日は、一日、宜しく頼む」
「宜しくお願いします」
随分と丁寧に受け答えしてくるな? と、考えつつ、俺も相手に合わせる。
相手が好意的に接してくるのなら、こちらも好意的に接して問題ないだろう。
俺は、楠木さんと会話をしながら、ハイエースから降りてきた男達を見る。
人数は、全部で11人。
「今日は11人で?」
「ああ。田口からの依頼だったからな。急いで人員をかき集めたんだが――」
「そうでしたか。それは、無理を言ってしまって申し訳なく思います」
11人もの人数を半日もかけずに集めるどころか、結城村にまで足を運んでくれたのだから、相当急いで準備してくれたのだろう。
「気にするな。会長の命令だからな。それよりも、今から、すぐに山に入れるか?」
「今から出来ますか?」
「そのつもりできた。時間は有効に活用しないとな」
「分かりました。それでは、現場まで案内します。それと、少し待っていてください」
俺は店に戻り充電していた携帯電話を手にとると駐車場に戻り携帯電話の電源を入れる。
すると携帯電話には、充電マークが点灯していて――、70%のラインを超えていた。
これなら山の中で使ってもバッテリーは持つだろう。
「お待たせしました。それでは、車を回してくるので、少し待っていてください」
俺は母屋へと戻り停めておいた愛車のワゴンRに乗り込むと、店の軒先間に移動する。
そして運転席から降りて駐車場で待っていた楠木さんに近寄ると、彼の方から話しかけてきた。
「なるほど……。店の裏手が家だったんだな」
何故か感心したような様子。
「はい。それと、今から、熊が出た山まで案内します」
「よろしく頼む」
自分の車に乗り込み、田口村長の果実園に向かう。
後ろからはワゴンRが3台付いてきている。
「わんっ!」
「うおっ!?」
いきなりの事に驚く。
「――な、なんだ!?」
ルームミラーを調整し確認する。
後部座席から、犬の吠える声が聞こえたが……。
確認していくと、後部座席の上にちょこんとフーちゃんが座っていた。
「フーちゃんがいる……。どうして、お前は桜と一緒じゃないんだ?」
「わんっわんっ!」
「まぁ、犬に聞いても仕方ないよな……話せるわけないし……」
フーちゃんをスルーしながら、車の運転を続ける。
10分ほどしてから、ようやく果実園の駐車場に到着した。
車から降りた俺は、フーちゃんを抱きかかえたあと、後ろから付いてきたハイエース3台を出迎える。
車から降りてきた楠木さんは、
「ここが熊の出た果実園か?」
「そうですね。死体も、そのままなので――」
「それは仕方ない。田口に聞いたが、熊が2頭出ただけでも異常事態だ。血の匂いを奴らは嗅ぎ付けてやってくるからな。死体を置いたまま、山を下っただけでも英断と言える。おい! お前ら! 十分に準備をしろよ?」
楠木さんは、他の猟師たちに声がけをする。
猟師の皆さまが銃を携帯し、リュックを背負っていく。
「月山さん。それでは案内してもらえるか?」
「分かりました」
まずは最初に猟師の人達を連れて行ったのは、俺が襲われた場所。
そこには血の跡は残っているがもちろん死体は兵士達に運んでもらったので、死体はない。
「血はあるな……。だが――。月山さん、ここで襲われたというのは本当なのか?」
俺はコクリと頷く。
「ふむ……。その熊は倒したんだよな?」
「はい」
「……倒した熊の死体が半日で消えるか……。俄かに信じられない話だが……。だが、ここに血があることは確かだ」
「それでは次の場所を――」
「ああ。頼む」
メディーナさんが熊を倒した場所へと案内したが――、いきなり楠木さんは顔色を変えると、大量に熊が死んでいた方角に向けて走っていく。
そして彼は足を止めた。
「――な、何が、起きたんだ? ここは……」
まだ日が昇り切らない内には分からなかったが、30匹以上もの熊が倒れ絶命していた場所の地面は、至るところに鮮血が撒き散らされていて、さらに血の匂いも酷いものであった。
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