5-1 衝撃の事実!本当はSランクって凄かったんだ!
「では、宜しくお願いします」
僕は、頭を下げて建物を出た。最高級宿にチラシをおいてもらうようにお願いしてきたところだ。
昨日は、依頼をこなしただけでヘロヘロになったので、宿で早めに休んだ。二人も疲れたのだろう。前日とは違いあっという間に寝ていた。元気なのは、夜行性の紅葉だけだった。
朝起きると、『チラシ配らないの?』とラスに言われ思い出し配達したところだ。
この街から移動して、隣町にも行かないとね。
チラシは、アーラグドラ領の周りを囲む五つの領土だけにした。やはり徒歩だと中々難しい。
取りあえず僕達は、隣町へこのまま出発する事にした。
徒歩で4時間ほど行くと、途中に小さな村があってそこで小休憩。そこにチラシを置いてもらって、さらに三時間かけて次の街へと入った。
朝出て街に入る頃には陽が暮れてもう夜だ。
「とりあえず、一番安い宿に泊まるよ」
「「はーい」」
うーん。もう少し冒険者らしい事をした方がいいんだろうか? 今日一日、移動しただけで終わった。
ラスを交えて話し合おうかな。彼女達がどう考えているかも聞きたいし。
「さあ、下りて。あ、そうだ。二人でチラシを渡すのをやってみようか」
「「え!?」」
「お仕事だよ」
「はーい」
レンカが返事をすると、サツナも頷く。
二人は半分ずつ持って宿に入った。
「あの、チラシおかせてください」
いきなりかい!
「あ、こんばんは! あの、祝賀会のチラシなんですけど、配って歩いているんです」
つい口を出してしまった。
「おや、アーラグドラ領の次の……いいよ」
受け取った宿の人は頷いた。
「やったぁ」
二人は出来たと大喜びだ。
「あ、それと、泊まりたいのですが。素泊まりでお願いします」
「では案内するよ。朝食と夕食はどうしますか?」
「朝食だけでお願いします」
僕がそう答えると、二人が驚いて僕を見た。また外食出来ると思っていたみたいだ。
「こちらになります」
案内された僕達は部屋に入った。ここは一応、布団があった。自分達で敷くようだけどね。
「ねえねえ、夜ごはんないの?」
レンカが言う。
「その事なんだけど、いやそれも含めて色々話し合おう」
「話し合う?」
レンカが呟くと二人共顔を見合わせる。
「うん。ラスも交えてね」
『あら? 私もなのね』
僕は頷いた。
そういう訳で、僕達は床に座って向かいあう。
「えっと、一年間は一緒に行動しようとは僕も思っているけど、二人はどうなの?」
「一緒がいい!」
レンカが叫ぶように言った。サツナも大きく頷いている。
「領土に戻った後はどうする? リアカーはないかもよ?」
「……一緒がいい。スラゼお兄ちゃんは嫌なの?」
レンカの言葉に首を横に振る。
「一緒でもいいよ。でも冒険者としてやっていくなら依頼を受けてちゃんと生活しないと、一年持たないかなって。バイガドさんが言った通りに宿に泊まるのならその分ぐらいは稼がないと、食べて行くのも大変になるよ。僕達は、討伐は無理だろう?」
二人は大きく頷いた。
ルイテットさんと討伐してわかったけど、倒した証拠が必要だ。角とか何かを持ち帰らなくてはいけない。倒すだけではダメなんだ。そう言うのにも慣れないと、討伐は受けられない。
「そう言う訳で、一つの街で一つは依頼を受けようと思う。それと僕は、ハンドメイドも趣味を兼ねてやろうかなって」
「うん。わかった。頑張る!」
「紅葉は連れて行ってくれるよね?」
サツナが不安になったのか訪ねてきた。
「大丈夫だよ。でも勝手にどこかに行かない様に言い聞かせてね」
「うん! ありがとう」
『で、私は?』
「うん。色々アドバイスが欲しいかなって」
『そうね。食事の話なら冒険者はモンスターを食べて旅を続けていたりするわ』
「モンスターか……」
『倒すのは私がするから調理とか覚えたら?』
「え? それもラスがやってほしいかな……」
『何を言ってるのよ。もし誰かと一緒の時、調理ぐらい出来ないと変に思われるでしょう? あ、そうだ。それ様にもう一つナイフを買ったら? ちょっと刃が長めのヤツ。シートもいっぱいあるんだし、お肉用に袋を作るとか』
「……やってはみるよ。明日、雑貨屋に行こう」
って、僕がラスと話していたからか二人はもう紅葉と遊んでいた。
はぁ。大丈夫かな、こんなんで。
□
「あの、祝賀会のチラシ張ってもらえませんか」
レンカがお店の人にチラシを渡す。
朝食を食べて、雑貨屋に来た。
「おやもう配り歩いているのかい。わかった張っておくよ」
「ねえ、お兄ちゃん、見て来ていい?」
「うん」
「おや、兄弟で冒険して歩いているのか」
本当の兄弟ではないけどね。
「あの、ハンドメイドなんですけど、売れ筋ってどんなのですか?」
「うん? ハンドメイド? あ、あの子達にプレゼントかい?」
「そうじゃなくて、作ってみようかなって。あ、材料は木材なんですけど」
「おや、そうかい。そうだね。小物入れやクシかねぇ。ちょっとしたアクセントの模様があるのが人気だよ」
「模様かぁ……」
「こっちにあるから見てみるといいよ」
ハンドメイドコーナーに連れて行ってくれた。
色んな物が置いてある。木材で作った物は他に、ペンダントやスプーンなどもあった。そのどれにも模様が掘られている。
何か掘った方がいいのか。
「ねえ、ラス。木を彫るのにあのナイフで掘れる?」
『彫刻刀という掘る道具があるわよ。一本ぐらい買ったら?』
そういうのがあるのか。だったら買うかな。ここに売っているだろうか? って、あった。ハンドメイドにも。持ち手が木で耳がついていて動物の顔になっている。
僕が使っていたら変かな? 可愛すぎる。
「あ、そうだ。ねえ、こういうのも自分で作れないかな?」
『そうねぇ。大量に作るのなら職人さんに刃だけお願いって出来るかもだけど……。鉱石でも探す? それを錬金して刃として使うのも可能だけど』
「あ、それいいかも!」
『でも二人は置いて行くわよ。それでもいい?』
「うん。いいよ。今度はちゃんと待っていてくれると思う」
森に来て怖い目に遭っているからね。
「あ、そうだ。ヤスリ……」
『それもオリジナルで作る?』
「ラスは凄いや」
少し照れている様子だけど嬉しそうにほほ笑んだ。
『では、出かけましょう。ついでだから依頼も受けていったら?』
「あぁ、なるほど」
それがいいかも。自分で錬金も出来る様になればいいんだけど。ルイテットさんも作っていたもんね。
「ねえ、これ買っていい?」
レンカが持って来たのは、ペンと紙だ。
「あのね、デザインするの!」
サツナが言った。
「うん。まあ、自分のお金で買うならね」
「やったぁ」
「紅葉描くぅ!」
とサツナが嬉しそうに言った。
デザインではなくて、お絵かきではと思ったけど自分で買うならいいかな。
「毎度アリ」
二人共嬉しそうだ。うん? あれ? 僕に見せた以外の物も手に持っている。
「何を買ったの?」
「色を塗れるペンだよ!」
「え? 色を塗れるペン!? 凄いね」
施設では見た事ないよ。ぼ、僕も使ってみたいかも。
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