4-3
クリスタさんを通して依頼をもらった僕は、待ち合わせの場所に来た。勿論リアカーを引っ張って、ちょっと手前で置いて来た。いつも通りラスのシールドで隠してある。
ここはニョロガラ領土では、一番人の手が加わっていないラビの森の入り口の一つ。
今日一緒に行く冒険者は、ルイテットさん。ランクはなんとC!
僕がFランクだと知ってもOKをくれた優しい人だ。特徴は、紫の髪に白銀のマント。
森の入り口には、何人もの冒険者がいたけどすぐにわかった。彼以外は、複数でいたしマントを付けているのも一人だけだった。
「あの、ルイテットさんですか?」
「あ、君がスラゼくん?」
「はい! よろしくお願いします」
「うん。宜しく」
思ったより若い。Cランクだしもっとおじさんかと思ったけど、20代後半から30代前半に見える。それでも僕の倍ぐらいの年齢って事だけど。
『優しそうな人ね』
僕は、そっと頷いた。
「結構優秀だと聞いたよ」
「え? いえ、そんな……」
僕の力じゃないから申し訳ないような気がする。
「Aランクの物までサーチ出来たとか。そこでちょっと相談なんだけど、Cランク以上とかいう限定でサーチできるかな?」
僕はチラッとラスを見ると、出来ると頷いた。
「はい。出来るます」
「出来るの!? 君かなり優秀だね!」
「え!?」
そういうもんなの?
大丈夫なのかとラスを見ると、何故かウインクを飛ばして来た。また何か考えてるな。
「では、宜しく頼むよ。モンスターは俺が倒すから任せて」
「はい」
うん。僕はモンスター倒せないからね。でも出来れば会いたくない。
『大丈夫よ。近くにモンスターはいないわ』
そっか。よかった。僕はある程度森の奥へと進んだ。
『この辺でサーチするわね』
ラスがそう言うと、パーと草や木の実に色が灯る。
正面の方が沢山光ってる。
「えっと、こっちです」
やや進むとあちこちが光ってる。
「あ、これとあれですね」
「あ、本当だ。これCランクでこれBランクだね」
え? 素材がわかるんだ。凄い。
「これもそうみたいです」
「へえ。これも? 何ランクかわかる?」
『それは、Aよ』
「Aランクみたいです」
「おぉ!! 凄いね君」
「はい。ありがとうございます」
ルイテットさんって強そうなのに、ウキウキして採取している。そして、僕が教えなくてもわかる素材は採取している。僕、必要かな?
なので取りこぼし? みたいのをここにもありますって教えて行く程度でよかった。
採った素材は、手にした袋にどんどん入れて行く。
『あの袋は、劣化を防ぐ袋みたいね。見てみる? チェック』
******************************
採取袋
ランク:S
製作者:ルイテット
腐敗保護
******************************
ラスが保護したもの以外を初めて見た。製作者の名前まで出るんだ。ってルイテットさん自身が作ったんだ。凄い。腐敗保護が劣化を防ぐ効果があるって事か。そういえば、食料ボックスにもついていたような。
『あれ? 紅葉だわ』
「え? 森の中に?」
『えぇ。モンスター感知を張っているからね』
「うん? どうした?」
僕が驚いてラスに聞くと、顔を上げてルイテットさんが僕を見た。
つい、普通の声で出しちゃった。
「あ、いえ。なんでもないです」
「そう。トイレなら我慢しないで行ってね」
「はい……」
紅葉が一人で来たとは思えないからまさか二人もいるのかな?
「ねえ、二人も来てる?」
『探ったら一緒にいるわね』
「どっち?」
『彼を放置して行くの?』
「うん。トイレって言う事にする」
『わかったわ。モンスターは周りにいないから大丈夫だと思うけど』
「うん。案内お願い」
ルイテットさんを見ると、鼻歌を歌いながら採取している。楽しそうだ。
「すみません。トレイ行ってきます。直ぐに戻ってきますので!」
そう言うと、ラスが移動を始める。僕はそれを追いかけた。
「え!? あ、ちょっと待って!」
ごめんなさい。ルイテットさん。
すぐ近くに二人はいた。
「何やってるの!」
「あ、お兄ちゃん!」
「お兄ちゃんじゃないよ! リアカーで待っていてって言っただろう!」
「だって、紅葉がここのモンスターは強いからスラゼお兄ちゃんじゃ殺されるって言うから」
とサツナが泣きだした。そうするとレンカも泣き出す。っげ、泣き出した!
僕が殺されると思って来たのはいいけど、自分達も危ないとは思わないのか?
はぁ……。
「あのね、ラスがいるから大丈夫。もう泣かないでよ。それよりリアカーに……」
「そ、その子達は?」
振り向くとルイテットさんが立っていた。
「あ、ごめんなさい。待っている様に言ったんだけど……」
「おやその子動物じゃないよ。オウギモンガというモンスターだ」
それを聞いた二人は、僕の後ろに隠れた。
って、あれ? リスに見える様にしてくれているんじゃなかったの?
『あら忘れていたわ』
忘れていたって! 見つかっちゃったんだけど、どうすんの?
「あぁ、大丈夫。取り上げたりはしないから。ペットとして飼われるぐらい大人しいモンスターだから。ただその子たぶん色からして稀代だね」
「キダイ?」
聞き返すとルイテットさんは頷いた。
「突然変異したモンスターって事。飼うつもりなら鑑定してもらった方がいいかもね。狂暴そうには見えないけど、本来はFランクにもみたいないモンスターなんだけど、ランクがついているかもしれない」
「そうなるとどうなるの?」
「君達が対処出来るようなFランクならいいけどそれ以上なら届け出が必要だろう」
そういうもんだったんだ。まあでもランクはFより下だから大丈夫。
「それならもう鑑定してありますので問題ないです」
「そうか。君達も一緒に来るかい?」
「え? いいんですか?」
ルイテットさんの申し出に僕は驚いて聞いた。
「心配で来てくれたんだろう? このまま帰すのもかえって危険かもしれないし。俺は、採取さえできればいいからね」
と言った時だった。
ぴょ~んとサツナの手から抜け出し紅葉が森の中に逃げたんだ。
「待って! 紅葉! 危ないよ」
とサツナが駆けだす。
「危ないよじゃなくて!」
僕達も慌てて追いかける。草が深いので、僕からでは紅葉の姿は見えない。けどサツナは追いかけているみたいだ。
「ラス! なんとかならない!?」
『まずいわ! ずっと奥にモンスターがいる』
「モンスター?」
『ランクEよ。って、紅葉が止まったわ!』
「もうダメじゃない」
紅葉をサツナが抱き上げる。紅葉は、もぐもぐと何かを食べている。土をかき分けたのか、前両足と顔が土だらけだ。
「はぁ。もうちゃんと掴んでないとだめだろう。奥にモンスターがいるみたいだから焦ったよ」
「何!? 君、感知も持ってるの?」
とルイテットさんが驚いている。
あぁ、しまった。いるんだった……どうしよう。
『あぁ! 紅葉が食べたのって幻の芋だわ』
「芋?」
足元を見ると、紅葉がいただろう場所をラスが覗いている。僕も覗く。
「これが幻の芋?」
『食べられてしまったから価値はないかもしれないわね』
「幻の芋だって!?」
ルイテットさんがそう言ってのぞいたかと思うと、突然両手で掘り出した。そして、食べかけの芋を両手で持って顔の高さまで掲げて、マジマジと見ている。
「凄い!! これ、譲ってもらっていいかい? 君達の秘密は守るから」
「え? 秘密?」
僕に振り返りルイテットさんがうんと頷いた。
なんか嫌な汗が流れている。どの事だろうか? 紅葉? それともラス?
ルイテットさんが立ち上がった。
「スラゼくん……」
「はい」
僕の声は裏返っていた。
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