妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜

1-1 冒険者として再出発して、人生を取り戻します

 「召喚!」


 そう叫ぶ声が聞こえた。

 その後、目の前に現れたのは、小さな妖精さんだった。


 そして、バンとドアが開いた。知らない怖いおじさん達が入って来て、何かを探している。


 「もう一人ガキがいたはずなんだが?」


 僕が目の前にいるのに、探しているの?

 何だか怖くて動けなかった。

 静かになって居間に行けば、血まみれになったお父さんとお母さんがいた!


 「おとうさーん! おかあさーん!」


 お兄ちゃんはどこ?


 「おにいちゃーん!」


 『―――』


 何か妖精さんが話したけどわからなかった。



 ――夢。またあの時の夢だ。

 あれから十年経つと言うのに、あの日の事だけは鮮明に覚えている。そして、あの時の妖精さんも目の前にいる。あの日の事が現実だったんだと語っているんだ。

 って、あいかわらず何を言っているかわからないけどな。


 一人になった僕は、施設に引き取られた。

 施設と言ってもモンスター退治を生業とする為の人材として育てられ、色々教えられた。

 十歳からは、冒険者登録をさせられて稼いだお金は、搾取されている。勿論それは、逃げられない為だ。

 冒険者協会は、それに目を瞑っている。


 今年で僕は十五歳。大人と認められる歳なのに、力もお金もない僕達は、養ってやっていたんだからと、そのまま搾取され続けている。

 逃げればいいのだろうけど、僕達はこの小さな世界しか知らないからどうにもならない。


 でも今日、その小さな世界の囲いは突破られた――。



 「よし、連行しろ」


 施設の人が連行されていった。僕達は、それを茫然と見ている。

 どうやら僕達は、施設の人達に騙されていたようだ。

 僕達の様な扱いを受けているのは、この領域だけ――領主が裏でやっていた事だったらしい。って、領主になんて会った事もないけどね。


 前々からこのアーラグドラ領域の冒険者がおかしいという通報を受けていたらしく、こっそり内偵していて今日、国王の命により取り締まりに来たらしい。


 目の前にいる剣士が教えてくれた。


 「君達には、聞き取りをする予定だ。その後どうするか、それぞれ決める。施設の者はいなくなったが、暫くはこの建物を使って生活してもらう事になる。経営は、次の領主が決まるまでの間、我々が管理する事になっている。君達の担当は、私、グルロダイト王国第一騎士団、特捜隊第21班所属バイガドだ。宜しく」


 って、言われてもなぁ。


 「はい。どうぞ」


 「……食べていいのか?」


 「食べていいのですよ」


 ぼけーっとしている僕に差し出してくれて、食事係の人からパンを貰った。ほんのり甘い味がついている!

 この日は、僕達はいつも通り、自分達の部屋で寝た。


 次の朝、起きるといい匂いがする。

 特捜隊の人達が、炊き出しをしていた!

 それを食べてから聞き取り調査が始まった。


 「君は、スラゼさんで宜しいですか? 覚えていたらでいいので、いつからこの施設にいたかわかりますか?」


 「五歳です」


 ふむふむ。と聞きながら紙に書いて行く。


 「ご両親がどうしているか知っていますか?」


 「……殺されました」


 「そうですか。それは、辛かったですね。ご兄弟は?」


 「兄がいたはずなのですが……」


 「お兄さんね。お名前を覚えていますか?」


 「リュゼラ……」


 「リュゼラさんね。見た目はどうかな? 君と同じ銀の髪に瞳だったかな?」


 「だったと思います」


 「そうですか。あなたに親戚とか頼れる知り合いとか居りますか?」


 わからないので、首を横に振った。というか、居ればそこに引き取られていると思うんだけど。


 「これからですが、冒険者を続けますか? ただしFランクからになります」


 と聞かれてもなぁ。冒険者だって無理やりやらされていたし、よくわかんないんだよね。


 「あの、他にってあるんですか?」


 「うーん。適性があれば、我々の様な職つく事も可能です。ですが、色々と条件とかもあるんです。それ以外はやりたい事にもよりますが、元手が必要かと思いますので、すぐには無理でしょう」


 それって結局冒険者になるしかないって事じゃないか。お金なんてない。全部とられていたんだから。


 「じゃ、冒険者で……」


 「Fランクからになりますからね」


 「あの、さっきから言っているランクってなんですか?」


 「え!?」


 驚かれてしまった。


 これの事だよ。と僕が所持していた冒険者カードのランクを指さした。


 ―――――――――――――――

 名前:スラゼ

 ランク:A

 レベル:60

 ―――――――――――――――


 あぁ。これか。


 係りの人の話を聞いて驚いた。

 本来ランクと言うのは、冒険者の強さの目安らしい。Fランクが最低で、Aランクだと凄く強いらしい。説明が曖昧だけど、僕は強くないのでAランクではないのがわかる。


 それでなぜAランクなのかと言うと、強い敵がいる場所へ行くのにはそのランク以上の者がいないと行けない事になっているらしい。つまり依頼を受けられない。その為に、ランクの偽装をしていたようだ。

 施設の皆、そろってAランクだった。本来なら凄く強い集団って事になるな。


 レベルも適当だろうと言われた。

 これは、ステータス鑑定というのを行う事によりわかるらしいが、そんなもの僕達は受けた事が無い。


 係りの人の感想は、よく生きていたなだった。

 僕もそう思う。


 冒険者希望者は、一緒に来ていた魔導師にステータス鑑定をしてもらう事になった。色んな強さを数値化したものらしい。

 これにより、ランクアップの申請もできるらしい。


 僕の本当のステータスがわかった。


――――――――――――――――

 名前:スラゼ

 レベル:10

 HP:27/27

 MP:205/500

――――――――――――――――


 「君は、魔法系だと思われるんだが、どうやら君には保護の魔法が掛けられているらしくてね、これ以上わからないのだ」


 と魔導師の人に言われた。

 これ以上と言われても、表示されているステータスを見てもさっぱりだ。


 「思い当たる事はないかい?」


 「思い当たる事とは?」


 「誰かに魔法を掛けられたとか」


 「うーん。あ! 妖精さんかな?」


 「よ、妖精?」


 「はい。ここにいます。あの日からずっといるんですけど……」


 「あの日とは?」


 「ここに連れて来られる事になった事件の日です……」


 「……そうか。そういうのが詳しい者に聞いてみよう」


 「信じるですか?」


 「あぁ」


 今まで、信じてもらえた事なんてなかったのに……。

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