愛と勇気の文化祭編

第46話 俺は弱い!

夏休み明け、日に焼けた奴も学校に来ない奴もいる。

そんな中、学校中が楽しみにする行事がある。


「文化祭だ!」


我が高校の文化祭は、基本的になんでもOK自由だ。

当日は髪を染めるもOK。

俺は染めないけどね。


「なんかやりたいことある人ー?」


俺はくしくも文化祭の実行委員になってしまった。

ちなみに相方は美月だ。


「たこ焼き屋さんがいい!」

「悪くはねぇけどな、俺はやっぱりメイド喫茶かな」


俺の案は女子の猛反対を受け、即却下となった。


「焼きそばも悪くないな·····」


現在上がっているのは、たこ焼きと焼きそばだ。

票がぴったし割れている。


「戦争か? 焼きそば軍よ」


美月と小森が率いるたこ焼き軍は、血気盛んですぐに戦争をしようとする。


「まだ話し合いの余地はあるぜ? たこ焼き軍よ」


俺、凌太、小倉が率いるたこ焼き軍は、穏健派。

だが、両者一触即発のムードだ。


「やるか? 焼きそばの方が上ってことを解らせてやるよ」

「たこ焼きの方が美味しいよ!」


なんだよこの戦争は。

大阪でも無いぞ。


「ジャンケンで決める?」

「良いのか? 得意種目だが」


最終的に、ジャンケン戦争で決めることとなった、

代表戦でたこ焼き軍は美月、焼きそば軍は俺だ。


「ふっ·····」


俺は目を閉じ、心の目で感じ取ることにした。

不思議と、全てが見えるような気がした。


「最初はグー」


拳を強く握り締める。

握りの強さで血が垂れる。

今はそれも気にならない。


「ジャンケンポン」

「だァァァァァ!」


俺が目を開けると勝負はもう着いていた。

そこに存在するのは、勝負の跡と狂喜乱舞する美月の姿だった。

たこ焼き軍が、入り乱れ踊る。


「ちっくしょぉぉぉぉぉ!」


俺はまた負けたのだ。

小さい赤子が駄々をこねるように、俺は床を叩き悔しがった。


「あの日から俺はどれだけ修行を積んだと思ってるんだ·····」


あの日負けて以来、俺はずっと修行を積んできた。

チョキでもグーを砕く。

もう負けないと、絶対の自信があった。


「なんか浸ってるわよ、雑魚が」

「そっとしておけ」


周りの声が聞こえるが、今は気にならない。

自分の弱さにぶち当たったから。


「俺は弱い!」


焼きそば軍対たこ焼き軍の戦争は、無事たこ焼き軍の勝利で終わった。

そう、これはただのジャンケンである。





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