捌 助け

46 助け……の巻き


「そういう事か~」


 韓国艦隊からの半荘はんちゃんへの攻撃がやみ、竹島から少し離れた場所で停船すると、半荘は竹島の反対側から遠くを眺めて、日本艦隊を発見した。


「ようやく助けが来た~~~!!」


 クルーザー沈没から一週間

 助けに来た日本艦隊に手を振る半荘。


 しかし日本艦隊は韓国艦隊と同じく、竹島と離れた位置に停船してしまった。


「うっ……助けに来たのに、止まってしまった。これって、竹島を挟んでの睨み合いか?」


 その通り。

 どちらの政府からも、島に近付かず、引き金を引くなと命令が下っている。

 ただし、韓国艦隊からはレーダー照射が行われ、日本艦隊の艦長、各員はピリピリしている。


「とりあえず、基地に帰るしかないか」


 まったく動きの無い日本艦隊を見ていた半荘は、走って海を渡り、硝煙漂う島の動画を撮ってから、基地に入る。

 そうして地下にあるシェルターの扉を、打ち合わせ通りに数度ノックする。


「わ!」


 重たいシェルターのドアがゆっくり開くと、飛び出して来たジヨンに抱きつかれた半荘は、驚きの声をあげた。


「無事だったのね……」


「ど、どうしたんだ??」


「うぅぅ……」


 抱きついたまま涙するジヨンに、半荘は何もできず、落ち着くのを待つしかなかったのであった。



 それから場所を変え、キッチンで遅めの昼食をしながらお喋りをする二人。

 どうやらジヨンは、爆発音が響き渡るシェルター内で、かなり心細い思いをしたようだ。

 いつ、シェルターが崩れ落ちるかの恐怖があったらしい。


 その恐怖を打ち消すために、半荘は撮れたてホヤホヤの動画を見せて説明するが、ジヨンは安心するより呆れてしまった。


「よく生きていられるわね……」


 目の前で、地面が爆ぜる大迫力の映像を見たジヨンが呆れるのは仕方がない。


「忍チューバー服部半荘だからだ」


「はぁ~~~」


 半荘が、説明にもなっていない説明を笑顔でするものだから、ジヨンは大きなため息が出るってもんだ。


「でも、ひとつ問題があるんだよな~」


「問題?」


「これ見てくれよ」


 半荘が次に見せた動画は、韓国軍人デフンとのやり取り。

 そこには、ジヨンを船に乗せてくれと頼んだにも関わらず、拒否される映像が映し出されていた。


「うそ……」


「韓国にしたら、ジヨンが残虐な忍チューバーの人質であったほうがいいみたいだな」


「そんなわけは……」


「韓国船に乗るのもやめたほうがいいかも? その場で殺されて、俺のせいにするかもだな」


「じゃあ、私は一生祖国に帰れないじゃない……」


「えっと……これって俺のせい??」


 愕然がくぜんとしているジヨンに問うが、半荘は睨まれてしまう。

 しかしそれは一瞬で、韓国にも怒りが向く。


「ああ! もう! 門になんか入れるんじゃなかった!!」


 そこからは、門大統領批判。

 半荘は、ジヨンの愚痴をぐったりして聞く事となった。



「聞いてるの!?」


 止まらない愚痴に、半荘がボケーっとしいたら、ジヨンに噛み付かれてしまう。


「聞いてます! なんか俺のせいで迷惑かけてすみません!!」


 ジヨンの圧力に、何故か謝ってしまう半荘。

 美人のジヨンの顔が般若のように変わっていたのが、よっぽど怖かったのであろう。


 プルプルと震える半荘を見たジヨンは、「ハッ」として顔を緩める。


「まぁきっかけはあなたでしょうけど、あなたは終始、私の事を大事にしてくれているわね」


「だ、だろ?」


「そうね。これなら、本当にあなたと偽造結婚してもいいかも。籍は一生抜かないかもしれないけどね?」


「うっ……」


 ウインクでかわいく見せるジヨンに、半荘の心臓は撃ち抜かれて恋に落ちた……のではなく、心臓を鷲掴みされた気分になって恐怖する。

 偽造結婚はしてもいいのだが、先ほど見た豹変振りのジヨンを、嘘でも伴侶に迎える事は、恐怖の対象になったようだ。

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