第100話
「お待たせいたしました。ユキが送ってくれたキャティーニャ村の紅茶です。」
マコト様はお盆にティーカップを2客とティーポットを持ってきて、優雅な仕草で紅茶を淹れてくれた。
マコト様が淹れてくれた紅茶は、ほんのりと甘い匂いがした。
「ありがとう。」
「あ、この紅茶はミルクが良く合うんですよ。淹れますか?」
「お願いします。」
紅茶にミルクの白が混ざっていく、その様子をじっと見つめる。
紅茶とミルクが混ざりあって色が変わっていく。
「混ぜるのはとても簡単ですね。」
「え?」
急にマコト様がそんなことを言い出した。
何を言っているのだろうかと、マコト様を見つめる。
マコト様はどこか遠くを見つめてさらに続けた。
「一度ミルクが混ざった紅茶からミルクだけを取り出せますか?」
マコト様の問いかけに何をわかりきったことを聞くのだろうかと首を傾げて答えた。
「混ざってしまったらミルクだけを取り出すのは無理だわ。」
「そう、ですよね。そうなんですよね。」
マコト様はそう言って寂しそうに微笑んだ。
「一度混ざりあってしまったものを綺麗に分離させるなんてとても難しいんですよ。」
「………?そうですね。」
マコト様が何を考えてそんなことを言っているのかわからないが、頷いておいた。
「すみません。ちょっと煮詰まってしまいまして。さ、紅茶が冷めてしまいますからね、飲みましょうか。」
そう言ってマコト様はゆっくりと紅茶を口に含んだ。つられるように私も紅茶を口に含む。
優しい香りが口の中から鼻に抜けていった。
どこか安心するなようなふんわりとした香りに思わず笑みが零れる。
「口に合ったようでよかったです。飲み終わったらユキのところに行きましょうか。さっそくですが、レイチェル様が元に戻る方法を探していきたいと思います。」
「ええ。もちろん。なんだってするわ。」
どうすればいいのかなんてわからない。見当もつかない。
それでも、レイチェルを元に戻さなければ。
紅茶を飲み終わると、クロとシロがやってきた。どうやらユキ様のところに転移するようだ。
「掴まっていてくださいね。」
私は言われるがまま、そっとマコト様に掴まると、眩いばかりの光が辺りを包み込んだ。
「マコトっ!!急にこないでよね!びっくりするじゃない!」
気づくと目の前にユキ様がいた。
どうやら無事にユキ様のところに転移できたようだ。
「ごめんごめん。レイチェル様を元に戻そうと思って。」
そう言ってマコト様は私に視線を向けた。
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