第97話


私がなにか言いたげな顔をしていると、それに気づいたマコト様が視線を合わせてにっこりと微笑んだ。


「聞きたいことがあるかと思いますが、今はまだ教えられません。すべてが終わったら教えて差し上げますので、今は何も聞かないでください。」


理由はまだ教えてくれないらしい。


なんとなく分かっていたことだが、少しだけショックを受ける。


「わかりました。」


それでも否という訳にはいかないので、頷いておく。


「………レイチェルと話すことは出来ないのか?」


エドワード様はマコト様の方を向いて確認する。


私の中にいるレイチェルと会話をする。マコト様とレイチェルは会話が出来たのだから、エドワード様も会話が出来るのではないかと思うが。


ちらりとマコト様を盗み見る。


マコト様は、ゆっくりと頷いた。


「可能ですよ。ですが、ゆっくりと話すのにはここでは安心できません。例の場所でなら………。」


まさか、誰かがこの部屋を見張っているとでも言うのだろうか。


それなら、今まで話していた内容を聞かれてしまったのだろうか。


私は慌てて周囲の気配を探す。こういうとき、暗殺者として今まで生きてきた経験が生きてくる。


だが、怪しい気配は感じなかった。


「ライラさん。安心してください。今のところはこの部屋は安全です。しかし、私たちがここから何時間も出ていかなかったのならば不信に思う人物がいるのです。ここまではこれないでしょうが、ここに至る道で監視している可能性はありますからね。」


マコト様が親切にも教えてくれる。


その言葉に、エドワード様は苦虫を噛み締めたような表情で頷いた。


嘘ではないらしい。


皇太子であるエドワード様は誰かに見張られているのだ。


「そうそう。本題がまだでした。私たちはレイチェル様の元に向かいます。そして、彼女を目覚めさせる方法を探してきます。」


「わかった。しかし、ライラ嬢は………。」


エドワード様はそこまで言って意味ありげに私を見てきた。


「ええ、暗殺者ですよ。」


マコト様はそう言ってエドワード様に向かってにっこりと笑った。


そうか、エドワード様は私が暗殺者だということを気にしていたのか。


騙されていないのかと心配になったのか。


下手をするとレイチェルを暗殺される可能性があるから、それも仕方がないことだろう。


「それも、彼女は貴方様の暗殺を依頼されているようですよ。」


マコト様はまるで世間話をするようににこやかに告げた。


私はぎょっとしてマコト様を凝視する。


まさか、そんなことまで知られていたとは思わなかったのだ。

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