第91話


「・・・誤解?誤解ってなにが?男色家ってどんな意味の言葉なんですの?」


ビックリして、目から溢れだす涙が一瞬だけ止まった。


パチクリと目を瞬かせて、マコト様を見つめる。すると、マコト様はゆっくりと視線を逸らした。


「どうしてそんな誤解をしているのかはわかりませんが・・・。エドワード様はレイチェル様一筋ですよ。」


「・・・うそよ。だって、マコト様と・・・。」


「だから、それは誤解ですっ!僕は女性が好きなんですってばっ!!」


マコト様が慌てるようにレイチェルの言葉を遮る。


ああ、そうか今、私の身体を使ってしゃべっているのはレイチェルなんだ。


「マコト様は・・・同性愛者なの?でも、この国では、同性愛は禁止されているわ。」


「ち、違いますって!!僕は男なんですっ!」


「・・・え?」


パチクリとまた目を瞬かせるレイチェル。


マコト様は疲れきったかのように、肩を落としていた。


レイチェルの驚きが私にも伝わってきた。


それに、私もマコト様が男だということに、非常に驚いている。


大きな丸い目に、サラサラとした少しだけ茶色い髪に細い首筋、そして筋肉のついていないような細い身体。


どこからどう見ても女だと思っていた。


世の中にはこんなにも儚げな男の人がいるだなんて、思っても見なかった。


「・・・おとこ?」


「ええ。」


「じゃあ、エドワード様は男の方がお好きでらっしゃるの・・・?」


「違いますっ!エドワード様はレイチェル様がお好きなんですっ!って、レイチェル様同じことを何度も言わせないでください。」


レイチェルはまだエドワード様のことを疑っているようだ。


疑っているというよりは、私の中にいるレイチェル様はどこか怖がっているようにも思えた。


元々、皇太子妃になりたくないと思っていたのがレイチェルだ。


きっと、怖いのだろう。


「私は・・・。」


レイチェルは何を思ったのか、そう言ったっきり黙りこくってしまった。


マコト様もレイチェルからの誤解を解くのに必死で疲れたのか、それ以上深くは訪ねてこないようだ。


黙って俯いてしまったレイチェルの肩を軽く数回ポンポンと叩いた。


「大丈夫ですよ。レイチェル様、ご安心して元の身体にお戻りください。エドワード様はいつだってレイチェル様のことを一番に考えていてくださってます。」


マコト様の言葉はレイチェルに届いたのか、レイチェルはコクリと小さく頷いたように思えた。




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