第83話

 


 


「エドワード様・・・。マコト様は私にエドワード様から手をひけと言いたいのかしら?エドワード様はとても酷い人だからと。」


「話が早くて助かります。」


マコト様があえてエドワード様を悪しきように言うなんて何かがある。


その一つはきっと私がエドワード様に恋心を抱いて、レイチェルとエドワード様の仲を割くようなことをしないようにするためだろう。


いささか直球すぎるような気がしなくもないが。


「安心していいわよ。私はエドワード様にときめいたりはしないから。」


レイチェルだったらいざしらず、私はエドワード様にそういった思いは持っていない。


それに、もう人を殺すのも嫌だと気付いてしまったから、エドワード様を殺めようとも思わない。


ただ、私は静かに生きて生きたいだけ。


「そうですか。」


そう言ってマコト様はホッとしたように微笑んだような気がした。


「私と、手を組みませんか?」


「え?」


突然のマコト様からの提案に、一瞬私の思考が止まる。


私を疑っているマコト様が私と手を組む?それは、どういうことなのだろうか。


「貴女はこの教会を孤児を守りたいのでしょう?私は、エドワード様のお心を守りたい。だから協力してください。」


マコト様の目は真剣そのもので、拒否を許さないといったような光をたたえていた。


私の力だけで教会と孤児を守るのは無理に等しいだろう。


だが、マコト様の力が得られれば教会も孤児も守ることができる。


エドワード様の心のことは正直知ったことではない。


ただ、記憶の中のレイチェルが大好きだった人だ。


そのエドワード様を守ることに拒否感はない。


「いいわ。協力するわ。でも、これだけは約束してほしいの。全ての憂いがなくなったら、私を自由にして。」


「自由にしたら、貴女はどうするんですか?」


「まだ、わからないわ。」


自由になりたい。


ここにいたら、また迷惑をかけてしまうから。


そっと、遠くから見守るだけに留めておいた方がいいだろう。


それくらい、私の治癒の力は稀有であり、人に狙われるものだ。


おいそれと教会に来るのではなかったと後悔している。


だが、教会に来なければライムちゃんたち孤児と出会うこともなく、命の尊さも理解できないところだった。


その点では、教会に来てよかったのだろう。


そこまで考えて、ふと思ってしまった。


もしかして、ここまでマコト様は見越していて私を自由にさせていたのだろうかと。


もしかして、ライムちゃんと出会ったのは、マコト様が裏から手を回した結果だったのだろうかと。


「でも、マコト様の邪魔はしないとだけは誓えるわ。」


「そうですか。では決まりですね。貴女には教会を守った後に、レイチェル様を目覚めさせるのに手を貸していただきます。」


 


 


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