第33話


ユキ様から聞いた話をまとめると・・・。

ユキ様の親友はユキ様と同い年で、同じ高校に通っていたということ。

高校っていう言葉は初めて聞いたはずなのになぜか、どんな場所かが容易に想像できてしまった。

彼女の親友の親は資産家で彼女は親が決めたレールの上を走るだけの人生だったようだ。16歳で結婚もしたが、その相手も親が用意した相手だったとか。

16歳という年齢で結婚は早すぎると思ったが、彼女の母親が早くになくなり、父親も病を患っていることがわかり早々に結婚させたかったようだ。

だが、結婚相手は彼女の父親が亡くなるなり彼女を省みることはなくなり、離婚をしたそうだ。この時点で彼女はまだ17歳だった。

結婚しながらも高校には通っていたらしいが、両親もいなくなり、離婚もしてしまったので、彼女のレールを整備する人間が誰一人いなくなってしまって、彼女は途方に暮れていたらしい。

今まで彼女の人生を他の日とが決めてきたからいざ自分で決めなければならなくなったときに自分が何をしたいのかわからず、段々と精神を患っていったということ。


「ユキ様の親友・・・私に似ているわ。私も親に言われるがまま淑女教育を受け、皇太子様と婚約して皇太子妃となるレールがしかれていたわ。私は、そのことに疑問なんて感じたことはなかった。」


「似ているから心配なの。レイチェルには親友のようになってほしくないから。だから一緒にレイチェルがやりたいことを探しましょ!」


そう言ってユキ様は私に微笑みかけてくれた。勇気をもらえるような笑顔だ。


「ありがとう。」


と私はユキ様に答えた。

正直、私もユキ様の親友と同じく、皇太子妃へのレールが敷かれていたから、そのレールから脱線してしまった今、何をすればいいのかわからない。

わからないけれど、自分の進むべき道を見つけるために、もがいてみようと思う。


ふと、思う。

エドワード様も産まれた時から皇太子になるレールが敷かれていた。

エドワード様も私と同じなのだろうか。それとも、エドワード様は敷かれたレールの上でも自らの意思を持ち歩いているのだろうか。







「きゃっ!!」


からからからーーーんっ!!!


辺りに木製の食器が散乱する音が響いた。

もちろん、私が落とした食器の音である。

レイチェル様と共同生活するようになってすでに3ヶ月が経っていた。

しかし、まだまだ私はこの生活になれず、未だにお皿をしまうこともできない。

今だって、積まれたお皿の上にお皿を一枚重ねただけなのに全部といっていいほどのお皿が落ちてしまった。

皇太子遇で使用していた陶器のお皿と違って木でできたお皿なので落としても割れないからよかった。


「レイチェル!またお皿落としたの?本当に不器用なんだから。怪我はない?体調は大丈夫?」


洗濯物を干していたユキ様が音を聞き付けてすぐに駆けつけてきてくれた。

ユキ様はこうして、私がへまをするとすぐに駆けつけてきてくれる。

私に怪我なないかを尋ね、体調を気にしてくれる。

お腹の子も大分大きくなり、時々お腹を蹴るのがわかるほどになった。

もう2ヶ月ほどで産まれてくるのではないかと言われている。

子供の成長は早いのに、私はまだ自分の進むべき道を決められないでいる。


「レイチェル。無理はしないで。できることだけでいいから。特に今は大事な時期なんだから。」


「ありがとう。でも、ユキ様ばかりにすべてを押し付けてはいられないわ。ユキ様は私の侍女ではないのだから。」


「そう。あ、マコトから連絡が来た。ちょっと待っていて・・・。」


ユキ様の元にマコト様から念話が入ったようだ。

念話とは遠くの人と会話ができる便利な方法だ。

ただ、双方に魔力がないとダメだが。

時々、こうしてユキ様の元にマコト様から連絡がくる。

内容は知らない。

今もユキ様はちょっと離れた位置でマコト様と念話をしている。


「えっ!!うそ!うそでしょ!!」


マコト様と念話をしていたユキ様から悲鳴のような声があがった。

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