第6話
「今回来た異世界からの迷い人とはマコトという人物だ。元は隣国に来たらしいのだが、隣国には二人いっぺんに異世界からの迷い人が来たとかで一人が我が国に来ることになった。」
「そうでしたか・・・。マコト様という方はどういう方でいらっしゃいますの?」
夢と同じ。マコトという名前の異世界からの迷い人。やはり、あの夢はただの夢ではないの?
「まだ、会ったことはないが聡明な人物らしい。我が国がマコトの影響でどう発展していくのか楽しみだ。」
「そうですわね。」
そう言ってエドワード様は嬉しそうに笑った。私もそれに会わせて微笑んだが、心に一抹の不安が残った。
「レイ。こうしてずっとレイを抱き締めていいたいが、そろそろ朝食にしよう。今日は部屋まで運んでもらうかい?」
「いいえ。私は大丈夫です。食堂まで行きますわ。」
優しく皇太子殿下が問いかけてくる。きっと私がうなされていたから気をつかったのだろう。
ただ、体調には問題はないのだ。少し不安というだけで。それなのに、部屋まで食事を運んでもらうのは侍女たちの負担になるだろうから、食堂に向かうと返事をした。
その返事を聞いて皇太子殿下はにっこりと笑った。
「無理はしなくていいんだからね。では、着替えて食堂に行こうか。一人で着替えられるかい?それとも、私が着替えを手伝って差し上げましょうか?私のお姫様。」
「エディ!ふざけないで。って、ちょっと夜着の裾に手をいれないでっ・・・。」
お姫様と言われたことをくすぐったく思って笑みを浮かべたが、次の瞬間、皇太子殿下は私の夜着の裾に手をいれて脱がせようとしてきた。
慌てて、皇太子殿下の手を掴む。
「レイ・・・。」
でも、皇太子殿下の熱の籠った視線と声を聞いてしまったらなにも言えなくなってしまった。
「エディ・・・。」
皇太子殿下を同じように見つめると、皇太子殿下の顔が近づいてきた。
それにあわせて私も目をゆっくりと閉じた。瞬間感じる唇への吐息。
「・・・んっ。」
優しく蕩けるようなキスをして、再び抱き込まれる。だんだんと激しさをますそれに、苦しくなり皇太子殿下の背中をトントンと手で叩き合図をすると、やっと唇を離してくれた。
「艶っぽいね、レイ。このまま抱いてしまいたいよ・・・。」
「・・・ダメです。」
再び、唇を重ねようとしてくる皇太子殿下の胸を両手で押す。皇太子殿下は残念そうに微笑むと身体を離してくれた。
「子供が産まれるまでの我慢だね。私は我慢できるだろうか。だって、愛しいレイが目の前にいるのに・・・。でも、キスは構わないよね?」
甘く囁かれれば頷くしかなくて、コクリと頷いた。
皇太子殿下との食事が終わり、皇太子殿下とは別れた。皇太子殿下には執務があるからだ。
私にも執務室に来ないかと言われたが執務の邪魔をしてはいけないので、辞退して部屋に戻ることにした。
「あの、迷ってしまって道を教えていただけませんか?」
部屋まで送ると言ってくれた皇太子殿下に断りをいれ、一人で部屋までの道のりを歩いているとふいに声をかけられた。
そこにいたのは見たこともない黒い髪をしている小柄な人だった。
とても整った顔形をしているが、女性にしては髪が短い。男性にも見えなくはないが・・・。
「どこに行きたいのかしら?」
にっこり微笑んで対応をする。
「皇太子殿下の執務室に呼ばれているんです。でも・・・迷ってしまいまして。」
あははと恥ずかしげに笑った顔はとても可愛かった。
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