イーリスの手記 自序

4月12日 諧調歴378年


拝啓、この手記を読む誰か


 私はこの手記の中で、彼にまつわる選択をしようと思う。

 私の短小な生涯では物足りないかもしれないが、自己満足できる程度の納得解を見つけ、判断をつけようと思う。


 古の堕竜、アルマス・ヴァルコイネン。

 彼は恐ろしい化け物なのか、愛すべき英雄なのか。


 私が彼について深く知ることができるかも定かではないし、私の目を通して見た彼が歪められたものでないとも限らない。だが丁寧に読み込んでもらえば、少なくとも事実を追うには十分な情報を提供できるだろう。そして、いつになるかは分からないが、参考までに私の結論を述べよう。それが当時の世界において趨勢を占めるのか否かも含めて。

 この拙い文字の羅列が、この手記が、他力本願ではあるが、あなたが彼を理解するための一助となればいいと思っている。

 最後に、この衝迫が彼の本当の姿を見つけられることを祈って。


敬具

イーリス・ポルクネン

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