隣の席のヤンキー女
ダメだった。あれだけの事件を起こしてもループは終わらなかった。しかしそのことに安心している自分がいるのも確かだった。
化学室が爆発した時のことを思い出すと今でも手が震えて冷や汗がドバドバだ。あのままループが終わっていたらとんでもないことになってしまっていた。後になってみると、よく僕もあんな大それたことを実行したもんだと自分のしたことが信じられなかった。
もしかしたら何をしても全て無かったことになるという環境に長く身を置きすぎたせいで、自分でも気づかないうちに色々な感覚が麻痺してしまっていたのかもしれない。
取り返しがつかない、というのも中々に久しぶりの感覚だった気がする。
もう物理的な事件を起こすのはやめておこう。そもそもアレでダメならどんな事件を起こしても無駄に思える。
橘恵美は合唱練習の時間が来ないでほしいと思っていたわけではないのだろうか。そもそも本当にタイムループは彼女が起こしているのだろうか。
もし違ったら僕がやっていることは全て無駄ということになってしまう。そんな風に思考がぐるぐると渦を巻いて目がまわってきた。
とにかくもうこれ以上事件を起こすのはやめて、別のアプローチを考えるべきだと身体中の細胞達が訴えかけていた。
「ふぅ。」
短い息を吐いて、ペチペチと頰を平手で叩く。大丈夫。あの事件は無かったことになった。あとはもう同じ過ちを犯さないようすれば良いだけの話だ。なにもビビることなどない。
「大丈夫大丈夫大丈夫」
僕はブツブツと下を向いて呟く。そんな時、突然くいくいと制服の右肩部分が引っ張られるのを感じた。
「お、おい。お前大丈夫かよ?」
顔を上げると、そこには眉を八の字にして心配そうにこちらを見ている金髪ヤンキーこと加藤菜々子がいた。
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