鋼のぼっち精神の揺らぎ
「そしてぇ輝くウルトラソッ」「ヘイ!」
カラオケの定番ソングのサビの部分を、グラウンドの中心で愛を叫ぶ作戦で培った大声量でもって歌ってみた。するとクラスの陰キャの唐突なイカレ行動にポカンとした顔が並ぶ中、一人笑顔で乗ってくれた奴がいた。
そいつの顔には覚えがあって、僕が男女の人体の違いについてを講義している時に加賀恵と同じように大爆笑してた奴だった。なんだか彼からは底抜けにいい奴っぽいオーラが醸し出されている。これがカリスマというやつだろうか。
僕が試しに「イェーイ」と言いながら手のひらを向けてみると、彼はこちらの意図を理解して同じく「イェーイ」と声をあげながらバチンと強めのハイタッチを返してくれた。神対応かよ。人にこんなに優しくされたのは初めてで少し感動した。もしループから抜け出せたならば、彼と友達になってみるのも悪くないかもしれないな。
「……は?」
……自分から「友達になる」などという考えが出たことに驚いた。
何せ友達なんてクソ喰らいやがれ二次元にこそ真理はあるんだ、というのが僕の持論だったのだ。
タイムループの中では、誰かに話しかけるたびに同じようなファーストコンタクトをし、少し打ち解けたと思ったらリセットされる。
僕の中では何度も話して親密になっているような気持ちなのに、相手からは毎回ぎこちない初対面の反応をされる。そんな状況に心が弱ってきているとでもいうのだろうか。
僕はそんなに弱い人間だったのか。いやそんなことはない。……そう思いはしたが、毎度毎度初対面からやり直しというのは流石に面倒になってきたので、人と会話するのはしばらくやめておくことにした。そう、ただ面倒なだけである。
断じて相手と自分とか感じている距離感の差に胸が苦しくなったりするわけではない。断じてだ。
心の中だというのに、僕は必死に言い訳をしていた。多分、僕自身に対して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます