帰宅がミッションインポッシブル
タイムループを利用して好き勝手してやろうと思った僕は早速10分間という時間の壁に頭を悩ませることとなった。
帰宅部なだけあって、僕は学校よりも家の方が100倍好きだ。
放課後のチャイムと共に即座に自転車置き場へと駆ける模範的な帰宅部である僕が、タイムループ中にどうにか家に帰れないかと試すのは必然だった。
しかし我が家から学校までは軽やかに自転車を漕いで優雅に登校して30分ほどかかる。
さっきのループでは、全速力で信号無視をしても10分で我が家にたどり着くことは出来なかった。
つまりこれは僕がタイムループ中に自転車で家に帰るということが不可能ということを示していた。
恥ずかしながら帰宅部である僕も、家へと瞬間移動する能力はまだ開花していない。
だが帰宅部として家に帰れないだなんてそんな腑抜けた結果に満足して良いのか。いや良い訳がない。
ということで僕は自転車よりも格段に早い乗り物を利用することにした。
僕にとって都合の良いことに、この学校の体育教師の松永先生は教師らしからぬ、教師の給料らしからぬ高級車、ランボルギーニで毎日出勤してくることで有名だ。
体育教師なだけあって脳が筋肉で出来ているのか底抜けにお間抜けさんなこともあって、生徒からはコネコネスケベ教師、ボンボンエロ教師と噂されている。
入学当初から既にセクハラ野郎と汚名名高いが、未だにクビにならないどころか問題にもならないことは、僕たち生徒に裏で何かしらの圧力が働いていることを想像させる。
では具体的に松永先生のどこらへんがオツムが足りていないのかと言われれば、高級車に鍵をかけない所だろうか。
神の天命を受けた僕はランボルギーニの運転席に座っていた。当然免許なんて持ってない。
初運転がランボルギーニとは、ブルジョワ気分だ。一つ不満な点があるといえば、
「ヤニくせー。」
これに限る。高級車は大事にしろよ。
イカしたエンジン音を響かせ、バックで駐車場から出る。うん。マリオカートは得意だし多分大丈夫だろう。そう気軽に考えてたら、バコンと後ろの木に激突した。
バキベキッと明らかに車が損傷を負っている音がするが、マリオカートではボム投げられることなんてあるんだから、このくらいなら大丈夫だ。
その後も高級車を乗り回し、タイムループする頃には至るところに傷と凹みをつけ、ミラーは二つとも根元から折れていた。
そしてそれから8度目のループで見事ループ前に家に帰宅することに成功した。
「あんたなんでこんな時間に家帰ってきてんの!あの車誰の!そもそもあんた」
ボコボコの車に乗って帰ってきた僕は、母親に鬼の形相で問い詰められることになった。
そういえば、今日は親が休みの日だったんだ。
家に着いても残り時間は僅か。その僅かな時間も親に罵詈雑言を浴びせられ終了。家に楽園は無かった。
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