隣の芝生は青い

 隣の芝生は青い。夏の空のようで、ときどきのっそりと寝そべっているサモエドは入道雲に見える。

 折よく隣家の主人が庭にいるときに顔を合わせたから、何を撒いているのか尋ねてみた。

「レモンスカッシュですよ」

「なるほどなるほど」

 青春の色というわけだ。

 お宅は何を、と聞き返される。

「珈琲なんです。豆から挽いてまして」

「ほう、確かに渋い良い色合いですな」

「それが、最近娘が泡立てた牛乳ですかね、フォームミルク? そんなものを撒きだしまして」

 困ったものです、と私は庭の一角を指さす。

「ラテアートというらしいんですが」

 芝生に何やら絵が浮き出てきているのだ。




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2020.08.18 11:42


「珈琲の超短編」投稿作

選外


http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2020/02/post-888e6c.html

http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2020/08/post-ac5f49.html

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