宇宙特捜戦隊最後の日――組織の存立目的の達成と組織防衛に関する一考察――

@pip-erekiban

第一話

 打ち続いた激闘の末に、宇宙マフィア「コロッスーゾ・ファミリー」の総元締め、ノコラーズ・コロッスーゾを検挙した宇宙特捜戦隊の面々は、なじみの居酒屋「大宇宙」において打ち上げパーティーを開催していた。パーティーとはいうものの隊長以下四名というささやかなものだ。

 隊長自ら隊員の盃に酒を注いでまわり、各々の労をねぎらう。

「いろいろとご苦労さんだったねレッド・パスターくん。個性的な面子メンツをまとめ上げることが出来たのは、きみのリーダーシップのおかげだよ」

「いやあ、恐縮です」

「私の指令にはなかなか従わなかったブルー・パスターくんが、きみにはすんなり従ったんだからたいしたものだ」

「ありがとうございます」

「ノコラーズ・コロッスーゾを逮捕したあの採石場での活躍は、後々までの語りぐさだよ。あのピンチからよくぞ盛り返したもんだよ」

「俺たちの戦場はいつだって採石場ですよ、隊長」

 レッド・パスターは照れ隠しのようにそうこたえた。

「やや、そこにいるのはブルー・パスターくんじゃないかね。宴席でも相変わらずクールに決めちゃって。じゃんじゃんりたまえよ」

 今日ばかりは普段折り合いの悪かったブルー・パスターに対しても分け隔てなく接する隊長である。ブルー・パスターの隣にどっかりと腰を下ろした隊長は、遠い目をしながら言った。

「私は気付いていたよ。何故きみが私の指示に従わなかったのか。なんといってもきみの戦闘技量は宇宙一。組織の指示やチームプレーに頼らなくても敵を倒すことが出来るという自負がそうさせたんだ。違うかね」

「……」

「私も作戦をめぐってはいろいろときみに干渉したが、それもこれもきみの技量を最大限に発揮させるためのものだったんだ。実は私は、他の誰よりもきみの技量を買っていたんだよ」

 隊長が酒盃を片手にブルー・パスターの肩を揺するように抱くと、ブルー・パスターが口許に微かな笑みを浮かべた。永年のわだかまりも、悪の組織を撲滅したという快挙によって氷解した趣すらある。

「ピンク・パスターくんともいよいよお別れだね。殺伐としがちな職場だったけれども、紅一点のおかげで実際何度も救われたよ。明日から寂しくなるねえ。もっとも、きみにとってはおめでたい人生の門出になるわけだけれども」

 ピンク・パスターが隊長の言葉に頬を赤らめたのも無理はない。「コロッスーゾ・ファミリーを倒したら結婚しよう」というレッド・パスターからのプロポーズがいよいよ果たされるからである。

「さあみんな、宇宙特捜戦隊の我々四人が揃うのはこれが最後なんだから、悔いのないように大いに飲ってくれたまえ」

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