手記/P1

 loulios.11 2014


 くそったれ! クノッソス宮殿以来の大発見があんな連中に荒らされるとは!!


 マスコミが流したくだらないデマかと半信半疑だったが、どうやら噂は事実だったらしい。

 〝大地の裂け目〟発見の一報があってから、我々発掘チームを特に支援してくれていたのはギリシャ政界の大物ヤニス議員だった。

 しかし彼にはアメリカ発祥の大規模な国際的カルト宗教――母なる大地教団に属しているという疑いがあった。本人は否定していたが、我が国の財政危機の折に教団が詐欺紛いの手法で集めた大量の資金で援助する条件を持ち掛け、政府中枢に取り入ったらしい。


 わたしたちはパルナッソス山の現場に着いてすぐ、キトンを纏って武装した母なる大地に拘束された。

 連中は、ヤニスの手引きであらかじめ近辺に潜んでいたらしい。リーダー格らしい不気味な末生りの中年男は、ICPOに指名手配されている教祖のセオドア・ドーソンだった。

 彼は元環境学者で、こうなる以前に発表していたコラムなどには共感したものだが、その頃マスメディアで目にしたときからずいぶん変わってしまった。自然崇拝の調査中にスタンダール症候群のようなものに陥ったとかで錯乱し、突如新宗教を興し教祖におさまったそうだが。


 ともかく通信機器など外部との連絡手段は奪われ、隙を窺ってはこうして手帳に現状を綴るのがやっとの状況だ。

 奴らが真実を隠蔽した場合、この記述がそれを暴く手助けになることを祈るしかない。どこかに隠して残すつもりだ。

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