第2話 カードの結末は
「首吊り峠のトンネル、か」
新也からカードを返された藤崎は、カードに書かれた内容を読み上げた。首を傾げて新也を見る。
「どうして、迷いなくこれを選んだんだ?そっちからは見えなかっただろ?」
「それは……」
妙に歯切れ悪く、新也が押し黙る。
藤崎は黙って返事を待つ。
ズっと一口珈琲を飲んで、新也は恐る恐る切り出した。
「……怒りません?」
「何が」
「いや、だから……理由を言っても怒りません?」
「それは、聞いてみないと分からない」
「……」
新也は気まずそうに、藤崎から目を逸らす。ぼそっと聞き取りにくい声で伝える。
「嘘、だからです」
「え?」
藤崎は聞きかえす。どういう意味か分からなかった。
「だから、その首吊り峠?の噂はガセです」
「……知ってる内容なのか?」
「いや、……カードを裏返しにされても、オーラ?みたいなので分かるんです。それ、5枚の内4枚は心霊やオカルトのホンモノじゃないですよ、多分」
非常に言いにくそうに、新也は告げる。
「じゃあ、お前は、偽物だから選んだってのか?何も起こらないから?」
流石にムッとしたように藤崎が確認する。新也は慌てて手を振った。
「いや、絶対に起こらないってわけじゃ……」
「お前に限っては絶対だろう」
つまらない、と藤崎がカードを机上にぽいっと投げ捨てた。足を組んで見下ろすように新也を見る。カードは新也の前に5枚、表を向いてバラバラと落ちた。
新也は冷や汗をかいた。
と、藤崎が人の悪い笑みを浮かべた。
「で。どれが、ホンモノだ?」
「どれって。取材行くなら僕は……」
新也は抗う。藤崎が首を振った。
「お前が本当に嫌なら行かなくても良いよ、けどどれが本物かは知りたい。今後のためにも」
「行かなくて良い?」
そんな都合の良い話が、と食い下がる新也に藤崎は頷く。
「良い、良い。そんなに怖がってるってことは相当やばいものなんだろ」
それを聞いた新也はふっと息をついた。
そして、スッと自分からは一番遠い一枚のカードを指さした。触れるのも嫌らしい。
藤崎がそのカードを拾い上げる。
「雨の日に出会うレインコートの少年の霊、か。一番嘘くさくないか?」
他のカードと見比べる。新也は首をブンブンと振って、否定する。
「どんな噂かは知りませんけど、本物だってカードが言ってます」
藤崎が眉を寄せた。
もとは編集が送ってきたものだ、カードにはあまり詳しい内容は書かれていない。新也と遊べるかと持ってきた資料の一部だったのだ。
「内容は、こうだな。雨の日に、N地区で1人で傘をさして歩いていると、黄色いレインコートを着た少年が現れる。少年は相手に何か一つ質問をし、上手く答えられないと相手を水たまりの中に引きずり込んでしまう……だと」
「都市伝説っぽい、ですね」
「すごく嘘くさいが?」
藤崎が笑う。けれど神妙な顔をした新也はなおも首を振る。
「いえ、……気をつけてください、藤崎さんも。このカードに触れたことで多分……縁が生まれたと思うんで」
新也は真剣な顔でもう一度、気をつけてくださいねと藤崎に言った。
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