第184話 ゴーレムの技
あれから敬太は魔法とスキルの何を買うか、2時間ぐらい悩んでしまっていた。
今、残りのお金を使ってしまうと、もっと下の階層に行って魔法やスキルが必要になった時に買えないと困るって考えと、今のうちに買っとけば、いざと言う時に役に立つかもしれないって考えがグルグルとしてしまい、迷ってしまっていたのだ。
最終的には、刺突系の【奥突き】を3千万円で買っただけで、残ったお金は取っておく事にした。まぁ、無難な着地点だろう。
「ゴル、行くよ~」
「ニャー」
うじうじと長い事悩んでいたおかげで、十分に時間が取れた。これだけ時間を空ければ11階層の炎は消え、熱さもおさまっているだろう。
今度は「置いていかないで」と必死に訴えるゴルと一緒に、様子を見に行く事にした。
ダンジョンを下りて行き、まだ電気を通してない真っ暗な10階層のボス部屋に入ると、普通のアイアンゴーレム達が11階層への扉の前に座っているのが暗視スキル【梟の目】で見えた。
「どうした~?」
敬太が声を掛けるとアイアンゴーレム達は立ち上がり、シュタっと敬礼ポーズをして出迎えてくれた。直ぐにゴーさんを【亜空間庫】から出して通訳を頼むと【通信】スキルを使ってアイアンゴーレム達の思いをイメージで、敬太の脳内に直接送り込んできてくれる。
伝わって来たイメージによると、やはり炎が熱くてダメージが入ってしまったみたいで、避難していたとの事だった。
「他のゴーレムは大丈夫だったの?」
この場に見当たらない、壁になってくれていた5体合体ゴーレム達の事を聞いてみると、あいつらは大丈夫との答えだった。
体が大きくなると、熱にも強くなるのだろうか?まぁ避難してるアイアンゴーレムがいるので、避難出来なかったって事は無いだろうけど、ちょっと心配になってしまった。
早速、敬太は【亜空間庫】からネットショップで買っていた、潜水用小型ボンベを手にし、11階層へと入って行く準備を始めた。この潜水用小型ボンベは、使用時間が15分と短いが、自転車の空気入れで手軽に空気をボンベに充墳する事が出来るので、メンテナンスが楽だし、値段も29,900円と手軽だったので買ってみた物だ。
このボンベをゴーさんに鎧になってもらった時に、何処かに収納してもらい、鎧の中の空気だけで動ける様にしてもらうのだ。
それともう一つ、初代ハードシェルバッグと共に無くなった一酸化炭素警報器も買ってきていた。これがあればゴルが倒れてしまう事も無いだろう。
「ゴーさん、セット!」
ゴーさんに合図を出して鎧の形に変形してもらう。ドロリと敬太の足元で溶けだしたゴーさん達が、敬太の体を包み込み、形を成していく。
イメージ的には可動部分にも穴は無く、空気が中に入って来ない様に空気穴も塞いでもらう。外観は、つるりとした顔でアメリカの映画でも有名なヒーローの鉄の男みたいになっているはずだ。なんせ動画をダウンロードしてゴーさんに見てもらったのだから。
手にしていた小型ボンベと一酸化炭素警報器はいつの間にやら無くなっていて、敬太の腰の辺りと、太もも辺りに収納されていた。
顔の部分はつるりとした顔になり、全面的に顔が覆われているので、敬太は自身の目では前が見えなくなっていたが、ゴーさんとの【同期】スキルによって、ゴーさん自体が自分の体の一部の様になり、そこから入って来る周りの情報が敬太に直接伝わってくるので、何の支障も無い。
「ゴル、空気がおかしいなと思ったら直ぐに伝えるんだよ」
「ニャー」
敬太は熱さや、一酸化炭素、酸素不足なんかの問題をゴーさんの鎧でクリアしているが、お供のゴルは何もしていないので、異変は直ぐに知らせる様に言いつける。一応、一酸化炭素警報器は装備しているが念の為だ。
ゴルは呑気に「分かったー」と返事をしているが、目を離さない様にしないといけないな。
11階層へと続く両開きの扉を開けて、階段を下って行く。
敬太は鎧を着こんでいるので温度変化に鈍くなっているが、【同期】スキルによってちょっと通路が暑いって感覚だけが伝わってくる。心配になって足元を歩くゴルを見たが、特に変わりは無く、平気な顔して歩いていたので、大丈夫だろうと判断した。
階段の踊り場まで下りてくると、階段の下の様子が明らかになる。
そこには未だに壁になったまま動かない5体合体のゴーレム達がいた。
敬太は【探索】を使って辺りの様子を伺うが、あれ程うじゃうじゃといたカンガルー達の反応は消え去り、一つも見当たらない。全部倒してしまったのだろうか?
「おーーい!」
踊り場から階段を下りながら、未だに壁になっている5体合体ゴーレム達に声を上げると、ゆっくり振り返りズサッっと敬礼ポーズしてくれた。どうやら全員無事だった様だ・・・。
そう思ったが、良く見るとトレードマークの鼻の部分にあるはずの「ゴーレムの核」が見当たらなくなっている。
「あれ?核は壊れちゃったの?いや、壊れたら動かないか・・・」
敬太が疑問の声を上げると、ゴーレム達のイメージが頭の中に伝わって来た。なになに「熱かったから体の中にしまった」だって。
そうイメージが伝わってきた後に、ゴーレム達の鼻の部分から「ゴーレムの核」がボコリと飛び出して来た。
「いや、しまえるのかい!」
思わず敬太は突っ込んでしまったが、どうやら今回の熱さで生み出された新しい技の様で、前までは出来なかったらしい。炎の中に居ると熱くて、ダメージが入ってしまいそうになり、敬太の「壁になって」と言う指示に背くのは嫌だと思ったら出来てしまったそうだ。
複数のゴーレムで合体させている時は、代表者の核が表に出るが、他の奴等の核は体の中に散らばっている状態だそうで、それだったら代表者の核も体の中に入れちゃえってなったみたいだ。
ヒントが出ていて、熱さと言う試練で閃いたみたいな感じなのだろうか。なんだか無理するなと怒ってやろうかと思ったが、俺の為とか言われると何も言えなくなってしまう。
「そうか、頑張ったな。ありがとう」
敬太がお礼を口にすると、ゴーレム達は嬉しそうにズサッっと敬礼ポーズをした。
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