第161話 復旧作業

 何だかチカラが抜けてしまったので、敬太も床に座り込み、しばらく泣いているサミーの様子を見ていたが、いつまで経っても泣き止む様子は無く、顔を床に付けたまま涙を流し続けている。


 敬太には泣いている女を攻めるような趣味は無く、サミーの仲間を殺してしまった事に対しても罪悪感を持っているので、これ以上の尋問をする気は起きなかった。


「はぁ・・・」


 仕方が無いので気が晴れるまで泣かせておこうと、放っておく為の準備を始めた。

 

 いつまでも後ろ手にしたまま結束バンドで縛っておくのも辛かろうと、自前のサバイバルナイフを【亜空間庫】から取り出し、結束バンドを切り、一瞬だけ腕の拘束を解き、抵抗する様子が無い女の腕を前に回して「ネットショップ」で買っていた手錠で再び腕の自由を奪っておく。この際、裸でいる女の、女の部分が丸出しで目が行ってしまうが、打ちひしがれている女をどうこうする気は無いので、淡々と作業の様に事を終えた。


 同様にきつく縛っていた足の方も一旦開放し、足首に手錠をかけたら、布団を一組部屋の隅に敷いておく。枕元には1日分の水とパンやらソーセージやらの食料を適当に置いて、最後にトイレ用にバケツをひとつ置いておく。

 逃走防止の為に衣服類は置いていかないが、これだけ用意しておけば文句はあるまい。

 

「逃げるなよ」

「・・・」


 小屋を出る前に「尊師の聖水」の効果を期待して、裏切りに繋がりそうな言葉を残し、また敷鉄板で入口を塞いだ。




 翌日。

 

 みんなで揃って朝食を食べている時に、外に出る時は連絡用にゴーレムを付ける様にと言い渡し、子供達にはなるべく改札部屋から出ない様にしてもらった。


 子供達からすると自由に遊べなくて少し不自由になってしまうが、もう少し我慢して欲しい。


 ゴルを引き連れてダンジョンに出ると、改札部屋の扉がある3階層の部屋の隅に、ゴーレム達が一晩掛けてせっせと運んでくれていたゴーレムの残骸が積み上がっているのが見えた。中にはストーンゴーレムも混ざっているので、既にダンジョン内のアイアンゴーレムの片付け終わって、ダンジョンの外に散らばるストーンゴーレムの残骸に手を着け始めているのが分かる。


 流石、不眠不休で動いてくれるゴーレムだ、仕事が早くて助かる。


「ゴーさん、核の【吸収】よろしく~。それから外のストーンゴーレムはダンジョンの入口付近に集める様にして」


 敬太が手首に巻き付きバングルに擬態しているゴーさんに声をかけると、ドロリと擬態を解き地面に降り立った。そして、小さいゴーレムの姿になってから「了解」とばかりにシュタっと敬礼ポーズをして答えてくれる。


 ゴーさんが【吸収】の作業をしている間、連絡用のゴーレムが必要になるのでMPを使い「ゴーレムの核」を1つだけ作り出し、アイアンゴーレムを1体作り出した。そうしたら、すぐに足元に居る小さいゴーさんに【同期】をしてもらい、そのまま敬太と新しく作ったアイアンゴーレムで4階層へと向かう。


 敬太を3階層で見送った小さいゴーさんは、敬太の姿が見えなくなるとシュタタと小さい手足を動かしながら、積み上がっているゴーレムに突っ込んで行って経験値を吸い取る【吸収】の作業に取り掛かっていった。




 4階層、6階層、8階層の偶数の階層はモンスターのリポップする場所がランダムになるので罠を仕掛ける事が出来ない階層になっている。なので、毎日朝の4時にリポップされる度にモンスターを倒して回っている。


 敬太は、ゴルと緊急連絡用のアイアンゴーレムを引き連れて、各階層を回ってリポップしたモンスターを倒していく。

 ここ最近まではリポップしたモンスター狩りもゴーレムに任せていたのだが、ゴーレムに任せる前は敬太ひとりで回っていたので各階層のモンスターのクセや弱点は知り尽くしている。なので、傍から見ればかなり手馴れていて、作業の様に淡々とモンスターを倒して回っている様に見えるだろう。



 8階層まで狩りが終わったが、1回もスキルを使う事無くミスリルソードの通常攻撃だけでモンスターを倒して回る事が出来た。

 手慣れているのもあるし、それなりにレベルも上がっているのもあるのだろう。これならばハイポーションを狙って11階層に進んでも問題は無いと思えた。

 まぁ、実際に先に進むのは、壊されてしまった罠や門の修復が終わってからになるのだが。ウサギの子の手足が腐ってしまう前には何とかしたい所だ。



 昨日モーブにも確認してもらったが、一応自分の目でも罠の状態を見ておきたくて、一度9階層に下りてから罠を確認し、9階層、7階層、5階層と罠をチェックして行って、最後に3階層に戻って来た。


 3階層に戻ると、丁度ゴーさんの【吸収】の作業が終わったらしくテコテコと敬太の足元に近づいてきた。


「ここに運んできた奴、全部【吸収】し終わったの?」


 思ったより作業が早かったので、念のためゴーさんに確認を取ったが、シュタっと敬礼ポーズをして終わっている事を伝えてくる。


「早かったね」


 敬太がゴーさんを褒めると、何となく嬉しそうにしながら敬太の手首に飛びつき、バングルに偽装して巻き付いてきた。

 なんだか可愛く思えたので、よしよしと軽く2~3度バングルを撫でてあげた。


 部屋の隅を見ると「ゴーレムの核」が抜き取られたゴーレムだった物の残骸が積み上がっている。これらを【亜空間庫】にしまう前に、今日の分の「ゴーレムの核」をマジックポーションを飲みながら作っていく事にした。

 1日10体。毎日欠かさず増やしていって、また屈強なゴーレム軍団を復活させなくてはならないのだ。


 今日の分のゴーレムを新しく作りだしたら、積み上がっているゴーレムの残骸を【亜空間庫】にササッとしまい、新しく作ったゴーレムをぞろぞろと引き連れながら2階層へと向かった。

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