第276話 鳩羽村ダンジョン攻略(14)
22階層に降りる階段まで、あと少しという所で視界内に赤いプレートが表示されログが流れた。
俺はログを確認する前に、先頭を歩いていた相沢の腕を掴む。
「や、山岸さん? ど、どうかしたんですか?」
「どうやらモンスターらしいな」
俺の言葉と同時に、天井から緑色の植物のようなモノがベシャッと言う水を含んだ布が落ちたような音と共に降ってくる。
大きさは、高さ3メートル。
横幅は5メートルほどあるだろうか?
かなり大きいな……。
――木魅(こだま)の眷属LV366の出現を確認しました。
「あれって……、モンスターですか?」
「そうらしいな」
「――え? で、でも……ここって、まだ21階層ですし何よりあんなモンスターが出てくるなんて聞いたことないです」
「聞いたことがない?」
「はい。少なくとも鳩羽村の日本ダンジョン探索者協会が提供しているモンスターリストには植物系のモンスターは鳩羽村ダンジョンには出なかったです」
「ふむ……」
そうは言われてもな……、実際に目の前に姿を見せたわけだし……。
「とりあえず、生態が変わった可能性もあるからな。相沢、戦ってみるか?」
「――え? わ、私がですか……?」
どうやら相沢は、植物系の魔物――、目の前でグチャグチャと変な液体を垂らしながらくねっているモンスターと戦うのは気分的に望んではいないようだ。
「まぁ――」
俺は指弾を飛ばす。
それだけで木霊の眷属が爆散。
辺りには木片が飛び散り、いくつかは俺達の方に向かってくるが全てをガードしておく。
「……あ、あの……山岸さ……ピーナッツマンさんはすごいんですね」
「まあな……」
それにしても、階段を利用する人間を待ち伏せするような行動を取るモンスターは、少し脅威だな。
相沢に相槌を打ちながら22階層に通じる階段を降りていく。
――そして……。
「これは、どういうことだ?」
階段を降りたところに簡易テントがいくつも張られている。
しかも、怪我人ばかり。
「相沢、俺は22階層は休憩が出来る階層だと聞いていたが?」
「はい。私もそう聞いていましたけど……、これは……」
相沢が戸惑うにも仕方ない。
彼女は、元来――、レベルはそんなに高くはない。
11階層の休憩階層に行くのが精いっぱいと言ったところだろう。
そんな彼女が見渡す休憩の階層は怪我人ばかり。
明らかに普通ではないというのが分かる。
「それにしても、どうなっているんだ?」
「分かりませんけど……」
階段を降り切ったところで話をしていると、周りの――、怪我人の手当をしている日本ダンジョン探索者協会の職員が小走りで近寄ってくる。
「失礼します。Sランクのピーナッツマン様と見立てましたが――」
「それが何か?」
唐突に話しかけてきたことを鑑みて――。
さらには野戦病院状態になっている22階層の状態を見て俺は少し気を引き締めて言葉を返す。
「これは申し遅れました。日本ダンジョン探索者協会に所属しております」
男が俺に名刺を渡してくる。
「水上(みずかみ) 正吾(しょうご)さんですか?」
「はい」
彼は俺の問いかけに返事してくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます