第212話 交渉事と宣戦布告(2)

「萬さんからですか?」


 額に傷のあるスキンヘッドの男が再度、確認していくが――、


「はい。話を伝えてくれれば……」

「分かりました。少し、お待ちください」


 やけに丁寧に言葉を選びながら、俺から距離を取る男。

 携帯電話を取り出したかと思うと。


「萬さんですか? 山岸という人物が尋ねてきていますが――。ええ――、はい。分かりました。すぐに――」


 どうやら、萬と連絡がついたようだな。

 聴覚が強化されているからこそ、話し声が聞こえてきたが聞こえない振りでもしておくとしよう。


「お待たせした。萬さんに確認が取れましたので、ご案内します」

「それは良かった」


 男の言葉に頷きながら後を付いていくと、重厚な門が開き音を立てて開いていく。

 門を潜り抜ける際に両開きの扉の厚さを確認したところ、見た目からして木材と思っていたが断面は金属のソレを思わせる。

 一応、スキル「神眼」で確認しておくが――、材質は鋼鉄製。

 厳重な警備に鉄の扉――、普通の人間が屋敷の中に招き入れられたら、脱出は難しいだろうな。


「靴は?」

「こちらでお脱ぎください。履物を用意しますので――」

「そうですか」


 用意された靴を履き、廊下を歩いていく。

 いくつもの部屋を通りすぎ――、奥まった突き当りに案内される。

 そこには、襖障子が――。


「こちらで、萬が待っています」

 

 頭を下げて俺から離れていく男。

 俺は、男に軽く礼を言う。

 そして襖を開けて室内に足を踏み入れた。


「これは山岸直人さん、お待ちしておりました」


 部屋の中は畳50畳ほどの広さ。

 10人ほどの黒づくめのスーツを来た男が室内に居り、俺と向かい合うようにして白髪の男――、萬(よろず) 勘吉(かんきち)が立っている。


「まぁ、招待されたからな。時間を置くのもアレだと思って来たんだが――、ずいぶんと熱烈な歓迎ぶりで帰りたくなるレベルだ」


 肩を竦めながら言葉を返す。


「これはこれは……、ずいぶんとご不安にさせてしまいましたか?」

「いや――、まったく」


 俺の返答に口角を上げる萬。

 

「はははははっ」


 高らかに笑う声と共に隣部屋から80歳近い老人が姿を見せる。

 



 ステータス 


 名前 佐々木(ささき) 雄三(ゆうぞう)

 職業 関西広域指定暴力団所属 関西広域暴力団組長

 年齢 865歳

 身長 161センチ

 体重 58キログラム

 

 レベル2771


 HP27710/HP27710

 MP27710/MP27710


 体力17(+)

 敏捷16(+)

 腕力14(+)

 魔力 0(+)

 幸運27(+)

 魅力 3(+) 


 所有ポイント 2770




 思わずスキル「神眼」で確認したが表示された数字が一瞬、バグったかと思った。

 レベルが高すぎる。

 普通の冒険者のレベルは50から500前後と聞いていたが、それを遥かに凌駕していることに驚く。


「これは、中々に気骨のある男ではないか」

「……」

「ふむ……。レベルは1か」


 老人は、俺を見てくると同時に、スキル「隠蔽LV10」を使ってLV1にしておいたレベルを言い当ててきた。


「どうして言い当てられたのか、不思議か?」

「――いや、魔法か何かだろう?」


 それ以外に思いつく答えがない。

 今までスキルを持った冒険者に会ったことがないし、佐々木が使っている場面を見た事もない。

 そうなると、俺のステータスを言い当てたのは魔法と考えるのが自然な流れだろう。




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