第146話 少彦名神

 上落ち村に走って向かっている間、目に映る光景をスキル「神眼」で確認していく。


「怪我人はいないようだが……」


 俺は視界内に表示されているログを見ながら眉間に皺を寄せる。

 どうやら俺が発動した魔法「少彦名神(スクナヒコナ)」は、完全に死んだ人間を蘇らせることは出来ないらしい。

 先ほど、助けた少女の両親を助けることは出来たが――、それは生物学的に死んではいなかったからだろう。

 つまり、人間として――、生物として死んだ場合には、俺の魔法「少彦名神(スクナヒコナ)」でも助けられないということになる。

……と、言う事は……、死亡者の数が0と視界内に表示されているということは死者と表示はされていたが、生物としては死んではいなかったということか……。




 魔法


 ▽少彦名神(スクナヒコナ)

 ▽草薙剣(くさなぎのつるぎ)




 念のため、二つの魔法特性を確認しておく。




 ▼少彦名神(スクナヒコナ)


 生者の傷を回復させる力を持つ。

 自らの存在力――、顕現力を消費することで発動が可能。


 ▼草薙剣(くさなぎのつるぎ)


 全てを素粒子レベルで分解させることが可能。

 範囲・距離は投入するMPに依存する。



 

 少彦名神(スクナヒコナ)の説明を見て何となくだが理解出来た。

 やはり、少彦名神(スクナヒコナ)が治癒できるのは生きている人間だけなのだと――。


 そこまで見たところで俺は首を傾げる。

 何となく視界内に表示されているステータス画面が、以前とは異なっている事に気が付いたからだ。




 ステータス


 神性属性:ピーナッツマン 信仰力192000

 名前 山岸(やまぎし) 直人(なおと)

 年齢 41歳

 身長 162センチ

 体重 66キログラム


 レベル1(レベル1100)

 HP 10/10(11000/11000)

 MP 10/10(11000/11000)


 体力217+〔4774〕(+)

 敏捷215+〔4730〕(+)

 腕力216+〔4752〕(+) 

 魔力100+〔2200〕(+) 

 幸運100+〔2200〕(+) 

 魅力103+〔2200〕(+) 


 ▽所有ポイント  5 


 


 信仰力って何だ? そもそも、ピーナッツマンって……。

 突っ込みどころが満載なんだが……、しかも信仰力が増え続けている。

 意味が分からない。




「それにしても……」


 以前にも、伊東市には何度も来たことがあったが――。

 現在、走っているのが市街地だからなのか倒壊した建物がとても多い。

 しかも火事や、車が焼けた跡なども多く見受けられる。


「神の杖か……」


 どこの国が攻撃を仕掛けてきたかは知らないが――、どんな理由があるかは知らないが無関係の人間を巻き込むなど、あってはならないものだ。

 それはもうテロリストと何も変わらない。


 


 市街地を抜けまっすぐに上落ち村へと向かう。

 道路ではなく、山の中を突っ切る。


 木々の枝の撓(しなり)りを利用しながら、木々の上を跳躍しながら進むこと2分ほどで視界が一気に開ける。


「神居村か――」


 森の中から抜け出たあと、地面へと降り立ち回りを見渡すが、【神の杖】が落ちた場所から近いという事もあり、殆ど全てが崩れた土砂に埋もれている。

 念のために、スキル「神眼」で確認するが生存者の確認はできない。

 

「これでは、魔法も意味をなさないか……」


 俺は、すぐに上落ち村跡地へと向かう。

 時間としては、隣の村と言う事と強化された肉体であることから僅かな時間で到着することが出来た。


「あれは……、佐々木か?」


 まず目に入ったのは、真っ二つになったクラウンであった。

 次に、見えたのは仮面の男。


「――っ!」


 考えもせず体が動く。

 仮面の男が――、狂乱の神霊樹を斬り裂いたあと、返す刀で佐々木の首を狙ったのが見えたからだ。

 その剣速は早く、佐々木は反応すら出来ていない。

 仮面の男と佐々木の間に割って入ると、俺は素手で――、男の刀を砕いた。




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