第6話 CHIの実話をもとにしたお話し

――ピンポーン♪


「ミキヒコ、お客さん!」


「あぁ、多分、宅急便だからカナが出て! 僕はトイレに行きたいから」


ミキヒコはそう言ってパタンとトイレのドアを閉めた。


「もう、何なのよ! 勝手すぎる!」


カナは、しぶしぶ玄関のドアを開け、妙に愛想のいい宅配員から、大きなダンボールを受け取った。


「開けてみて」


いつの間にか、トイレに入ったはずのミキヒコが後ろに立っていて、カナに優しく話しかけた。


カナは膝をついて、言われるがままに床に置いた大きなダンボールを開けた。すると、箱の中から真っ赤な薔薇が目に飛び込んできた。


同時に、狭い玄関に薔薇の香りが充満していく。


カナが驚いてミキヒコを見上げると、


「誕生日おめでとう。コレ抱えて、さすがに電車では帰ってこれないからさ」


カナは、ミキヒコがこの大きな花束を持って恥ずかしそうに電車に乗ってる姿を想像して笑った。


「おい、笑うなよ」


「だ、だって……うふふふふ」


二人の間にあった微妙な嫌悪感は、いつの間にかすっかりと晴れ、今では芳しい薔薇色の薄霧がかかっている。


「な、僕は悪くないだろ? カナが謝ってくれる?」


にやっとミキヒコが笑った。


「もう、何なのよ……うん、ごめん。ありがとう」


カナは降参した。


「一緒にチョコも入ってたろ?」


「え? 気が付かなかった! どこ?」


「ほら、そこにあるじゃん! よく見なよ」


「うん……ごめん……」


「いいんだよ、一緒に食べよう!」


「あ、ミキヒコの好きな、ダージリンティーを買っといたんだよ……」


「そうなんだ、ありがとう! そう言えばさ……」


――おしまい

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