仲直りする方法
柳佐 凪
第1話 よくあるケンカ
「悪かったよ」
ミキヒコは持っていたコーヒーカップをカツンと音を立ててテーブルに置いた。
「ほんとに悪かったと思っているわけ?」
カナは苛立ちを抑えきれず、サラサラの直毛がいつにも増して真っ直ぐに、まるで、静電気を帯びているかのように逆立って見える。
「こんなに謝ってるじゃないか!」
「全く響いてこない。全然そんな感じしないから」
「じゃあ、どうしろと言うんだよ」
「どこがどう悪かったと思っているの? 悪かったと思う理由を説明してくれない?」
「はっ! それは無理だね、だって悪かったと思っていないから」
「はあ?」
「悪かったと思えれば楽だよね、だって素直に謝れるからさ」
「悪いと思わないのに謝ってるの? 何それ? 余計に腹立つわ」
「どう思おうが、カナの勝手だよ。とにかく、僕は謝った。だから、君も『私も悪かった』とか言いなよ」
「無理ね、私は悪いなんて思ってないから」
「だろうね! それなのに、僕には悪かったと思えっていうのかい? 身勝手だな」
「勝手はそっちでしょう? ミキヒコが悪いのに、私に悪いと思えだなんて、勝手以外になんて言えばいいの? 自分本位?」
「いいから謝ってくれ」
「そんなの無理。だって、悪いのはミキヒコだから」
「いや、悪いのはカナだ」
「いいえ、ミキヒコよ!」
「ちょっと、落ち着いて考えてみなよ、君は悪いと思っていない、だから謝らない。でも、僕は悪いと思っていないのに謝っている。君も悪いと思っていなくても謝ればいいじゃないか」
さて、この、よくある水掛け論に突然の終止符が打たれる。
よくあるケンカだが、それだけに、有史以来さまざまな解決方法があったはず。
ミキヒコとカナは、この後どうなったのかと言うと……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます