仲直りする方法

柳佐 凪

第1話 よくあるケンカ

「悪かったよ」


ミキヒコは持っていたコーヒーカップをカツンと音を立ててテーブルに置いた。


「ほんとに悪かったと思っているわけ?」


カナは苛立ちを抑えきれず、サラサラの直毛がいつにも増して真っ直ぐに、まるで、静電気を帯びているかのように逆立って見える。


「こんなに謝ってるじゃないか!」


「全く響いてこない。全然そんな感じしないから」


「じゃあ、どうしろと言うんだよ」


「どこがどう悪かったと思っているの? 悪かったと思う理由を説明してくれない?」


「はっ! それは無理だね、だって悪かったと思っていないから」


「はあ?」


「悪かったと思えれば楽だよね、だって素直に謝れるからさ」


「悪いと思わないのに謝ってるの? 何それ? 余計に腹立つわ」


「どう思おうが、カナの勝手だよ。とにかく、僕は謝った。だから、君も『私も悪かった』とか言いなよ」


「無理ね、私は悪いなんて思ってないから」


「だろうね! それなのに、僕には悪かったと思えっていうのかい? 身勝手だな」


「勝手はそっちでしょう? ミキヒコが悪いのに、私に悪いと思えだなんて、勝手以外になんて言えばいいの? 自分本位?」


「いいから謝ってくれ」


「そんなの無理。だって、悪いのはミキヒコだから」


「いや、悪いのはカナだ」


「いいえ、ミキヒコよ!」


「ちょっと、落ち着いて考えてみなよ、君は悪いと思っていない、だから謝らない。でも、僕は悪いと思っていないのに謝っている。君も悪いと思っていなくても謝ればいいじゃないか」


さて、この、よくある水掛け論に突然の終止符が打たれる。


よくあるケンカだが、それだけに、有史以来さまざまな解決方法があったはず。


ミキヒコとカナは、この後どうなったのかと言うと……





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