初恋結婚~旦那様は若奥様が愛しくて仕方がない~

名古屋ゆりあ

プロローグ

「まだ未成年だろ…」


「一体、誰がこの子を引き取るって言うのよ?」


「私のところは無理よ、子供が2人もいるんだから」


「それに年頃だから、もし間違ったことがあったら…」


みんな、揉めている…。


この場にいる全員は、誰が“わたし”と言う名の荷物を引き取るか揉めている…。


「――大丈夫か?」


震えているわたしの手を彼の大きな手が握った。


温かいその手に、わたしの心が落ち着いて行くのがわかった。


「こっちに行こう」


彼はわたしの手を握って立たせると、この場から一緒に立ち去った。


縁側に並んで一緒に腰を下ろすと、

「何も本人がいる前であんな話をしなくてもいいのにな」

と、彼は呆れたと言うように息を吐いた。


「うん…」


わたしは返事をすることしかできなかった。


「未成年って言っても18歳なのにな」


「…でも、あの人たちからしてみたら18歳は未成年なんだと思うよ。


わたし、先週の火曜日に高校を卒業したばかりだし…」


「なあ」


彼はそう言って、わたしの顔を見つめた。


「18歳って、結婚できるんだよな?」


そう聞いてきた彼に、

「えっ…確か、できると思うよ」


わたしは答えた。


「できるか…」


彼はそう呟いたかと思ったら考え込んだ。


「それがどうかしたの?


と言うか、何が言いたいの?」


彼はわたしの顔をじっと見つめると、

「俺と」

と、言った。


「えっ?」


「俺と結婚しないか?」


彼は言った。


「わたしと結婚…?」


「俺と結婚すれば…俺と家族になれば、いいんじゃないかと思うんだ。


そうすれば、どこにも行かなくてもいい訳だし…」


わたしのことで揉めているあの人たちのところに行くのは、もちろん嫌だ。


何より、彼から離れなくていい。


結婚すれば、家族になれば、大好きなこの人のそばにいることができる。


「もし嫌だったら…」


「なる」


話をさえぎるように、わたしは言った。


「わたし、結婚する」


わたしの答えに驚いた彼だったが、すぐに満足したと言うように微笑んでくれた。


「わたし、勇ちゃんのお嫁さんになる!」


その日から、わたしは大好きな人のお嫁さんになった。

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