第16話 ドワーフ爺の意地
3つ目の魂が到着したのはドワーフ爺であるドースンのところであった。
先程、スケルトン達を倒した時に使用していた二振りのハンマーを持っていた。
コレクトしてハンマーを小さくさせるよりかは、持っているほうがいいと気づいたのだろう。
あたりは相変わらず暗闇の中だった。
それでもドースンの目の前にいるアンデットナイトと睨みあう形となっている。
そこには松明の光がほんのりと光、
ほんのりと光るこの広場は戦えということを意味しているようだった。
その光は黄色くほんのりと光っていた。
まるで魔法のような松明の光、
これはロンパが発明したものであり、
壁や地面に松明より少し弱めの光を光らせることのできるものを塗りたくっているからだ。
双方は無言のまま睨みあい続けている。
その真上を浮遊しながらロンパは眺めている。
ドースンの二振りのハンマーがきらめくと、
怒涛の如く、ドースンは雄たけびをあげながら走り出した。
地面を蹴り上げる音と踏みしめる音が同時に聞こえていることから、
右足と左足がまるで計ったかのように前に乗り出している。
一方でアンデットナイトは巨大な剣を地面から引き抜く、
まるで伝説の大剣のごときのように、白い光が輝きだしている。
ドースンはその輝きで、一瞬だけだが、くらりとしてしまった。
その一瞬を見逃さないアンデットナイトは、まさに騎士のように躍り込み、
ドースンの懐に入ると、大剣を振り上げていた。
風と音と空気が振動して、ドースンは何が起きたのか理解できぬ表情で遥か後方に吹き飛ばされていた。
ロンパは最強な賢者であるが、
このような武器と武器のぶつかり合いに対しては少しだけしか触れたことがない、
その素人のロンパから見ても、アンデットナイトの動きは達人の剣士そのものだし、
ドースンはまるでバーバリアンのように暴れているように見えた。
「ふ、わしゃに本気を出させるやつがいるとはのう、こんなところでくたばって、スタート地点に戻っている暇はねーんだよのう、なぜかって? 見ちまった。この目で見ちまった。一人の勇者の誕生を」
ドースンがぽつりとつぶやくと、
それに敬意でも示したのか、ドースンをじっくりとみているアンデットナイト。
「仲間を裏切る真似はしたかねー、ということで、使わせてもらうよ」
「それに付け加えるなら、メイルンとネネーネはかわいい孫同然のものだ。その孫の期待を裏切る真似は爺としてやってられんのう」
ドースンは二振りのハンマーを小型化させると、
次に出したのは、四角いハンマーであった。
それを巨大化させる。
ハンマーと言えば丸っこいものとかをイメージしたりするだろう、
しかし、ドースンが今背負っている巨大なハンマーは四角いハンマーそのもの。
先程の二振りのハンマーとてこの半分の大きさにしかならない。
「これをわしゃはキューブハンマーと呼んでいる。ここからが本番じゃ」
アンデットナイトがそれを待ってましたとばかりに、
地面を思いっきり蹴り上げると、跳躍していた。
風が追い風となり、ドースンの顔面に振りかかる頃には、ドースンのキューブハンマーが閃いていた。いや、そこにあったのだ。
アンデットナイトは訳が分からずさらに巨大化したキューブハンマーに激突する。
キューブハンマーは四角い壁のごとくアンデットナイトに突撃してくる。
ただただ押されていくアンデットナイトは、右に左に上によけようとするも、すべての箇所にさらなるキューブハンマーが出現していく、それはまるで。
「キューブハンマーとはキューブからキューブへと魔力を使うことにより増殖させられる。それは壁のようでありウォールハンマーという別名もある。さぁ、積みじゃ」
アンデットナイトは剣を放り投げる。
その剣は遥か上空をはためかせ、キューブハンマーに激突した。
地面をも突き刺す大剣はキューブハンマーを突き刺すことはできず。
大剣自体が弾かれて粉々になってしまった。
アンデットナイトはキューブハンマーによって壁に押しつぶされた。
ぐちゃりと嫌な音を鳴らして、
ドースンはキューブハンマーを沢山に増殖したものから1個だけのハンマーに戻すと、
小型化させたのであった。
まだぴくぴく動いている。
「本当にしつこいやつじゃ」
そして1か所から炎が噴き出てきた。
そのあとに2か所目から炎が出てきた。
「あぶない、あぶない、時間が崩れるところじゃったわい」
そういってドースンはドワーフ特製マッチに火をつけて、
死体と成り果てているアンデットナイトを燃やし尽くす。
断末魔の悲鳴が広がる中、
ここまでで3体のアンデットを倒したことになる。
しばらくロンパは黙ってみていたが、ドースンという老人の危険度を再認識したのであった。
これほどまでできるのか、しかし、ロンパはこの老人には勝てる気がする。
いつしかロンパはアモスとして死ぬことではなく、
自分が育てた勇者メンバーに本気を出して殺されてみたい、
そういう欲求が生まれてきていたのであった。
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