「カクテルは聞いてる 10」

A:男性


B:女性



A:すみません…長く待って貰って……はい…ありがとうございます…えぇ、大丈夫です…お願いします


B:あれ…お店の場所知って…あぁ、あの後輩ちゃんから、聞いたんですね


A:いや、3つ先って言ってたので、とりあえず向かって貰ってます


B:え!?あー、だからか…あの…コレ…多分…反対です…


A:え……逆なの!?


B:えぇ、すいません、運転手さん、あの…〇〇って店に、向かって貰って良いですか?


A:あ…ナビ?…はい、大丈夫です…お願いします


B:詰めが、甘いですね(笑


A:すみません…あーー、部長に聞いとけば良かった!


B:アレ?後輩ちゃんは?


A:あの時は、なんとなく連れて行かれただけ、だからって…


B:なるほど…まぁ、ここまで来てるんですから、慌てないで行きましょ!


A:はい…


B:あんまり引き摺ってると、「A」さんの分、作りませんよ?


A:あっ、それは困ります!わかった、わかりました!


B:わかれば宜しい(笑


A:え?デート!?やっぱり、そう見えます!?


B:あぁ…でもコレは店外デートですよ?(笑


A:あっ……そうですね、ハイ、頑張りますよ!


B:何をですか(笑


A:勿論、同伴と飲み比べですよ!!(笑


B:潰れない程度に、して下さいね


A:んー、それは、これから出てくる、お酒次第ですねー


B:それなら任して下さい!頑張りますから!!


A:あの…それなんですけど…


B:はい?


A:いや、あんまり気負い過ぎると、空回りしちゃうんじゃないかなぁ…って


B:え、私が!?


A:えぇ…さっきから唇、触ってますから


B:あっ…


A:やっぱり緊張してます…よね?


B:そうです…ね…覚悟して来た、つもりなんですけど…やっぱり足りなかったのかな


A:そんな事無いですよ!僕が知ってるだけでも半年は、練習して来たじゃないですか


B:それは、そうですけど…


A:いつも通りに作れば、きっと大丈夫ですって!


B:いつも通り…


A:そうです、これまでの成果を!!とか、変に力入る方が、かえって身体も固くなりますから 


B:言ってる事は、わかるんですけど…出来るかな…


A:アレ?やっぱり今日調子悪いですね…


B:なっ、そんな事ありませんよ!


A:いいや、いつもみたいに「プロですから」って、言わないしっ


B:プロだからこそ、ここまで緊張するんですよ!


A:でも、その緊張を味わえるのも?


B:えぇ、そうですよ!私、プロですからっ!


A:今日も1日プロで居てくださいね?


B:わかった、わかりましたよ!この緊張もしっかり楽しみます!!(笑


A:お願いします(笑


B:あっ、そこ左で…ハイそうです、そこにお願いします


A:すみません、細かいの無くって…コレで、あ…いえいえ沢山待って貰ったので、ハイ…大丈夫です


B:ありがとうございます


A:忘れ物は?


B:ここに無かったら、店ですね(笑


A:その時は、諦めましょう(笑


B:ですね(笑、うわぁ…本当久しぶりだなぁ…


A:前、通ったりもしなかったんですか?


B:店開けた最初の頃は…でもそれも辞めようって決めてからは、来てないですね


A:そうなんですね…どうしましょう?僕から入ります?


B:いえ、ここは私から!


A:じゃ、お願いします


B:わかりました!


A:何してるんですか?(笑


B:ん?精神統一です(笑


A:濡れちゃいますよ?


B:大丈夫!じゃ行きますよ!


A:僕は、いつでも!


B:……2人です、ハイ、すみません、マスター呼んで貰えますか?お願いします


A:へぇー、ちょっとカウンターの感じとか、似てますね?


B:えぇ、似せてますから


A:なるほどなぁ…ふーん…あっ…


B:久しぶり!おじいちゃん!!


A:えっと…初めまして…


B:何しにって…お酒飲んで貰いに来たの!


A:あ、えっと…お酒飲ませて貰いに…


B:違うよ?うちの店に通ってる常連さん


A:沢山、飲ませて貰ってます


B:だから違うってばっ、もう!大丈夫だから!そういうのじゃ、無いからっ


A:そんなに強く否定するんだ…(笑


B:えっとね、今の私が出来る中で、納得したのが作れて来たから、そう…だから飲んで欲しくて


A:この日の為に「B」さん、沢山練習して来たんです


B:ちょっと…「A」さん…


A:いいや、常連だからこそ、ここだけは言わせて貰います!


B:もう…


A:ココのよりも、きっと…いや…絶対「B」さんの作るカクテルの方が、美味しいですから!!


B:やっぱり…連れてくるんじゃなかったかな…


A:だから、「B」さんのカクテルと勝負して下さい!


B:え!?ちょっと!!


A:お願いします!


B:あー、うん…そうなの…うん……改めて…お願いします


A:「B」さん、いつものアレ、お願いしますよ?(笑


B:ハイハイ、わかりました、わかりましたよ!(笑


A:準備出来たら、教えて


B:ちょっと待って下さいね、えー…うん、おじいちゃんも、ちゃんと見ててね?


A:出来た?


B:慌てないで下さい!

……(咳払い)今日は、どうします?


A:オーガズムを


B:いいや…「ターコイズブルー」から、始めよう


A:えっ!?コレって……


B:「Don't worry be happy」…


A:うわぁ…粋な事するなぁ…


B:おじいちゃん…


A:うわっ、「B」さんも凄い…本気だ(笑


B:焦るな…落ち着いて…大丈夫だから…良し!

お待たせしました、どうぞ、おじいちゃん


A:どうなるかな…


B:どうだろ…


A:え、ウソ…


B:…やっぱり…


A:いやいや、そんな事無いですって!


B:良いですよ…


A:良くない!!だって、あんなに…もう一度、ちゃんと飲んで下さいよ!


B:「A」さん……


A:じゃ、じゃあ何処が駄目だったんですか!


B:それは…自分で考えますから…


A:僕は素人のただの常連だから、聞きたいんです!


B:……


A:あんなに美味しいのに…じゃあ、おじいさんの飲ませて下さいよ…


B:それは…無理ですよ…


A:だってコレじゃ…納得出来ませんよ…僕が急かしたから…


B:それは違いますよ、行くって決めたのは、私ですから


A:でも…


B:おじいちゃん!?…良いの?


A:あ…ありがとうございます!


B:えっ…何って…それは……


A:味じゃ、ないんですか?


B:良かった…美味しく作れたんだ


A:でも…さっきダメって…


B:あっ…


A:真剣に作ってましたよ?


B:違うんです…さっき…失敗しない事に夢中で…


A:集中してるなぁって


B:それが、ダメなんです…


A:なんで!?


B:これからおじいちゃんが作るの、見ててください


A:ノッてますね


B:そうですね…凄く楽しそう


A:(笑う)


B:上手いなぁ…


A:うわぁ…凄い!!見ました今の!?


B:勿論!


A:えっ?僕に!?いやいや、ここは「A」さんが飲んで下さいよっ


B:おじいちゃんが、「B」さんに出したんですよ!


A:そうだけど…


B:ウチのと、飲み比べて下さい


A:わかりました……頂きます


B:どうです?


A:なんだろう…いつものと、やっぱり違う!


B:味は?


A:似てるんだけど…サッパリしてるって言うか…美味しいです…凄く


B:えっ…私にも!?


A:あっ…


B:良いの?


A:ダメですって!気が変わらないうちに、ササッと飲みましょ!


B:でも…


A:飲みたかったんでしょ!僕なんかより、ずーっと!


B:それは…そうですけど…なんかズルいなぁって


A:お酒は美味しかったって、さっき言いましたよね?ね?


B:もう、わかりました!頂きます!おじいちゃん、ありがとう


A:どうです?念願のお味は?


B:やっぱり…敵わないや(笑


A:いやいや、「A」さんのも、美味しいですよ!


B:今はもう皮肉にしか、聞こえませんけどねーっ(笑


A:本当なのに(笑


B:(ため息)「B」さんも、いろいろありがとうございます


A:何もしてませんよ(笑


B:本当だ…いつも飲んでるだけだった(笑


A:あっ、酷いですね(笑


B:さっきのお返しです(笑


A:えっ?次ですか?


B:えっ?私?ここに立つの?


A:楽しく作るコツですか?


B:ん?何言ってるの、おじいちゃん?


A:そっちで何やってるんですか?


B:いや、私もちょっと…


A:あっ「Hippy Hippy Shake」!


B:え、ウソ!?本当に?私と2人で!?


A:うわぁ…あのシーンが見れるんだっ


B:そこ、あんまり期待しないで下さいねっ!


A:アレ?出来ないんですか?


B:出来ますよ!だって私、プロですから!


fin


































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