「カクテルは聞いてる 3」

A:男性


B:女性




A:ねぇ?そろそろ教えて下さいよー!

「ラモス・ジン・フィズ」


B:えー…どうしよっかな(笑


A:あれから何回聞いても、そうやってすーぐ、はぐらかす!


B:だって…わざわざ言うのは、恥ずかしいじゃないですか!


A:え…もしかして…そういう事っ!?


B:ん?どういう事ですか?


A:いやぁ…それならそうと、早く言ってくれれば(照)


B:んーと…何か…勘違いしてません?(笑


A:いやいや、それはしつこく聞いたこっちが野暮でしたね(笑


B:あー……良し!ちょっと待って下さいね


A:ん?何してるの?


B:今の「A」さんに、ピッタリのお酒作ってますよー♪(笑


A:そんな直球は…恥ずかしいよ…(笑


B:はいどうぞ!「ブロンクス」ですっ


A:ありがとう!


B:アレ…?いつもみたいに、聞かないんですか?


A:「B」さんの気持ちは、しっかり受け止めますから!


B:(ため息)その気持ち…「A」さんが勝手に抱いてる…「まやかし」ですよ?(笑


A:…え?


B:あの…「ラモス・ジン・フィズ」は、確かにネガティブでは無いですけど…恋愛系でも無いですよ?(笑


A:えーーー!?そうなの…?じゃあ…さっきまで浮かれてたのは…


B:むしろもう、軽くフワフワ浮いてましたね(笑


A:うわぁ…超恥ずかしい……


B:ちゃんと地に足着けて無いと、足下のチャンスも見落としますよ!


A:せっかく空から、舞い降りて来たと思ったのに


B:待ってるだけじゃ、ダメですよ!ちゃんと自分で掴まないと!


A:クッソー…もうっこの悔しさピッタリのカクテル出して!


B:え!?良いんですか?(笑


A:手加減なんかしたら…もっとやさぐれますからね!(笑


B:さすが常連様(笑)ではご要望にお応えして!「キス・ミー・クイック」を、召し上がれ♪


A:さぁ…プロのお手並みは!?(笑


B:「幻の恋」です!(笑


A:うわぁ…もう現実を直視、出来ないや…(笑


B:ちゃーんと、前見て行きましょうね!(笑


A:…はい……


B:もう!「A」さんが、望んだんですから(笑


A:「B」サン…ヤッパリ…コワイ(笑


B:伊達にプロを、名乗ってませんよ(笑


A:でも…珍しいね?今日は飲まないの?


B:そうですね、今日は休肝日です


A:あら?なんでまた…


B:私にだって、いろいろあるんです!(笑


A:しばらく雨…降ってないのに?


B:そうなんですよ!おかげで、お仕事ばっかり!


A:趣味の時間減ったんだね(笑


B:はい…難しいけど、楽しいのに…


A:やっぱり「B」さん、変わってるよ(笑


B:良く言われます(笑


A:ねぇ…なんで「バーテン」なの?


B:はい?


A:「B」さんは…なんで「バーテンダー」やってるの?


B:え?気になります!?


A:そりゃ勿論!ちゃんと「グランド・スラム」にしますから


B:(笑う)…でも、そんな面白い話でも無いですよ?


A:僕だって、面白い話じゃなかったでしょ?


B:うーん…それもそうか…(笑


A:うーわ…ひっでぇ(笑


B:ごめんなさい(笑)

じゃあ…お詫びも兼ねて話しましょうか!


A:やった!お願いします


B:その前に…コレ!飲んで下さい


A:ん?なに出してくれたの?


B:「テネシー・クーラー」


A:教えて?


B:「あの日の約束」です


A:…頂きます


B:そんな畏まらなくても、大丈夫ですよ(笑


A:いや、だって…


B:約束って言っても、私が一方的に決めてる「けじめ」って言うか…うん「片思い」みたいな物ですよ


A:片思い…ねぇ、お相手はさぞ素敵な方なんだろうなぁ


B:(笑う)


A:何が可笑しいの?


B:素敵って(笑)あの頃でも60は過ぎてましたよ(笑


A:え!?おじさんなの!?


B:いいえ、私のおじいちゃんです!(笑


A:あー、なるほど…


B:おじいちゃんが、バーテンダーやってて、シェイカー降ってる姿は、なかなか決まってたんですよ?


A:その姿に片思いしたの?


B:それもありますけど…おじいちゃんが作るカクテルを飲んだ皆が、凄く嬉しそうって言うか…あの空間がとても暖かくて…


A:そんな場所を、自分でも作りたいんだ


B:そうです…って言っても実現させるには、やっぱり時間がかかりますね(笑


A:理想と現実はなかなか…ね


B:さっきまで幻の中に居たのに(笑


A:あっ、それは言わないでー(笑


B:お互い頑張りましょうね!


A:はい!…ん?あれ…そう言えば約束って?


B:まだ気になります?(笑


A:そりゃ気になるよ!


B:おじいちゃんが好きで、私が何度も何度も観せられた…映画があるんです


A:それって…もしかして…


B:知ってます?「カクテル」なんですけど(笑


A:やっぱり(笑


B:ストーリーはお粗末ですけど…あのカクテルを作るシーンは、何度も何度も(笑


A:トム・クルーズが格好良いからねぇ


B:そうなんですよ!だからおじいちゃんも、張り切っちゃって(笑


A:プロでも、なりきったりするんだ(笑


B:ええ!そりゃもう、しつこいぐらいに(笑


A:(笑う)


B:でも…おじいちゃんが、あのカクテルを作ると、店が盛り上がっちゃって


A:あのカクテル?


B:そう!だから私も、たくさん練習しましたよ


A:良かったらさ…今から作ってよ!


B:ええ!?まぁ…良いですけど……どうせなら、私も飲んじゃおっかな(笑


A:休肝日は?(笑


B:だって「A」さん、もういくつか飲んでますから


A:あぁ…そういう事(笑


B:じゃあ…作りますよ?


A:お願いしま…あっ……ちょっと待って!


B:どうしたんですか?


A:(咳払い)「B」さん!

(良い声で)ターコイズブルーからはじめよう。


B:(笑う)それ、私の台詞でしょ!


A:そうだけど、やっぱり…言いたいじゃないですか(笑


B:はいはい(笑)じゃあ、ちょっと待って下さいね!


A:因みに、ちゃんと意味あるんですか?


B:「ターコイズブルー」ですか?勿論!


A:楽しみだなぁ…って、おっと…魅せるね(笑


B:練習しましたからね!


A:あのシーンみたい(笑


B:ありがとうございます!

…お待たせしました!


A:じゃあ…教えて!


B:「清らかで清潔」です!


A:うわぁ…似合わなかった(笑


B:そうですか?まぁ私には、ピッタリですけど?(笑


A:それを自分で言う切なさね(笑


B:うわぁ…「A」さんひっどーい!(笑


A:とりあえず、乾杯しましょうか(笑


B:えー、何にしましょう?


A:おじいさんとの約束に!


B:…わかりました



A:それで…どんな約束をしたの?


B:さっき「A」さんは、誉めて下さったけど…私の「ターコイズブルー」は、まだまだなんです


A:こんなに…美味しいのに?


B:パフォーマンスも、色も…きっと味も…おじいちゃんには、敵ってません…


A:そんなに!?


B:だって…もっとこう…パァーっと、明るくなってましたから


A:あっ、それは…ごめん


B:良いんです、素直なリアクションが1番ですから


A:…うん


B:いつか、おじいちゃんに負けないぐらい…いいえ、おじいちゃん以上に、楽しく美味しい「ターコイズブルー」を作るんだって…この道に入った時に決めたんです


A:それが…片思いの約束か…


B:まだまだ、修行が足りないみたいですけど…ね(笑


A:そんなに言われると…おじいさんの「カクテル」飲んでみたいな


B:私も…もう1度…飲みたいです…


A:…もう飲めないの?


B:いいえ、「A」さんは飲めますよ!3つ先の駅前で、まだお店やってますから!


A:そうなの!?じゃあ今度一緒に、飲みに行きましょうよ!飲み比べもしたいしっ


B:私は…行っても、作って貰えないので…


A:えっ!?なんでっ


B:そういう…約束です


A:どういう意味?


B:私が…満足出来る「ターコイズブルー」を作れるようになったら、それを持って行く事


A:じゃあ…


B:えぇ…まだまだです(笑


A:難しいね…


B:それが、プロですから!


A:わかった!じゃあ「B」さんが、納得出来るのを作れるまで、店行くの我慢する!


B:そんな…気にしないで行って下さいよ!?


A:いいや!決めた、今決めた!

この店の常連のプライドに掛けて、「B」さんと一緒に、殴り込みに行きます!


B:なんのプライドですか(笑

まぁ、「A」さんがそうまで仰有るなら…私も頑張ります!


A:聞きましたよ?(笑


B:えぇ!言いましたから!(笑


A:証人はこの「ターコイズブルー」ですからね!


B:勿論!ちゃんとカクテルにも、聞こえるように言いました!


A:そうと決まれば…次からは宜しくね?


B:何を宜しく?


A:これからのルーティーンですよ!


B:あぁ…なるほど(笑


A:お願いしますね!


B:畏まりました!

あっ、グラス空きますね…次作ります?


A:じゃあ、最後にもう一杯!お任せで!


B:わかりました、じゃあ…

……こちらをどうぞ!


A:あっ!?コレって…


B:「ラモス・ジン・フィズ」です!


A:そろそろ教えてよー(笑


B:また、次の機会に(笑


fin


























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る